消えてゆく本屋さん 国も警鐘鳴らす 背景には「薄利多売」な慣習も
本の流通を巡る課題もある。業界独特のルールである委託販売制度だ。書店は出版社との間にある取次会社から本を取り寄せるのが一般的で、売れ残った本を取次会社を通じて出版社に返品でき、在庫リスクを負わない一方、利益率は2割ほどと低い。
どんな本をどれだけ書店に納品するかといった采配は、書店の過去の実績によって取次会社側が行う。人気作家の新刊や話題の本は、多くを売れない町の小さな書店は入手しづらい。書店にとって在庫を抱えることなく、本が入ってきては飛ぶように売れた時代に適合した「薄利多売」の仕組みは、今となっては利益を上げにくい構造となっている。
■買ってもらえる書籍を並べる努力が書店にも必要
「委託販売制度」によって、書店への配本を担う取次会社。個人経営の小さな書店にとって取引はハードルが高く、書店の新規参入を阻む要因とも指摘されている。
そんな中、取次会社を介さない書店もある。平成27年開店の「誠光社」(京都市上京区)は、直接出版社から本を仕入れて手数料を抑え、選び抜いた本を売る新しいあり方を提案している。
地図や時刻表、レシピ本、イベント情報誌など生活に必要な実用書が、ネットの普及で商品価値を失った。経営者の堀部篤史さんは「今や書籍は嗜好(しこう)品と化している。高価でも付加価値があって買ってもらえる書籍を並べる努力が書店にも必要」と語る。
書店の棚ごとに、個人や企業が棚主として契約し、それぞれが好きな本を並べて販売する「シェア型書店」という業態も生まれた。書籍販売の新規参入のハードルが低い上、特定の分野に絞った本を並べ、販売することで業界のPRにつなげたい企業も注目の業態だ。
本と読者をつなぐ活動をする合同会社「未来読書研究所」の田口幹人代表は、「大型チェーン店に町の書店、小さな独立系の書店が林立し、全ての本が必要なときに必要な人に届く場所が増え、本が流通することが大切だ」と話した。
■構造改革の英断が必要 直木賞作家で書店経営者の今村翔吾さん