なぜ帝京大は4年ぶりにラグビー大学日本一を奪回したのか…勇退する”名将”岩出監督が細木主将と共に成就した再建計画
最後の笛を聞くと、交代していた細木康太郎がベンチを飛び出した。アンツーカーの上でひざまずき、顔を抑えた。ラグビーの大学選手権の決勝が9日、国立競技場で行われ、帝京大が同じ関東大学対抗戦グループAに所属する明大を、27ー14で下し、4季ぶり10度目の優勝を果たした。 細木は帝京大の主将だ。身長178センチ、体重115キロの船頭役は、かねて伸びやかな気質で知られていた。ここで大きなアクションをとるのは、必然とも言えた。 場内インタビュー。 「ありがとうございます!」 スタンドの各方面へお辞儀し、時折、目をつぶりながら声を絞った。 「すごく、嬉しいのと、これまで、たくさんの応援、サポートをしてくれた方に、本当に感謝したいです。僕たちラグビー部に対して、帝京大の学長をはじめ、教員の皆様方、医学センターの先生、監督やコーチだったり、応援してくれたファンの方々だったり、一緒に戦ってきた部員の皆が…皆がいたから…こんなに…嬉しいんだと思います」 つくづく、人間は感情を持つ動物だ。岩出雅之監督は、細木の次にマイクを向けられ「細木主将の挨拶を聞いて、ウルッときますね」。淡々とした口調に湿り気を加えた。 勝者のハイライトには、タックルとスクラムがあった。10点リードで迎えた前半23分、自陣22メートルライン付近のラインアウトから攻められる。明大はモールの背後から、ウイングの石田吉平を走らせた。 男子7人制日本代表にもなったエースのラン。これに対峙したのは、帝京大の江良颯だった。スクラム最前列のフッカーに入りながら、身軽さと強靭さを併せ持つ2年生レギュラー。味方とマークする相手の確認をしながら、石田を真正面から跳ね返した。まもなく接点で明大の反則を誘い、事なきを得る。 準決勝では、関西王者の京産大に37―30で勝利もコンタクトで後手を踏んだ。 明治大との決勝を前に岩出監督は「ラグビーは、タックルだ」と発破をかけた。 帝京大は、明大が目指す「クイックテンポ」の攻撃を何度も跳ね返す。接点で球を奪うシーンも多く作った。