ラグビー「リーグワン」が開幕!”府中ダービー”は東京サントリーサンゴリアスが勝利…変化を選手や指導者はどう感じたのか?
トップリーグから生まれ変わったラグビーの国内リーグ「リーグワン」が8日、各地でディビジョン1の3試合が行われ、スタートを切った。 「こういう状況でも、今日の試合を迎えられたことは、非常に嬉しく思います」 こう語ったのは8日、味の素スタジアムで東芝ブレイブルーパス東京との開幕戦を勝利で飾った東京サントリーサンゴリアスの主将の中村亮土だ。 「こういう状況」とは、7日に国立競技場で予定されていた開幕戦が中止となったことも含まれている。出場予定の埼玉パナソニックワイルドナイツから、新型コロナウイルスの感染者が出ていた。この日の試合後には、9日の2試合中1試合がキャンセルになったとも発表された。豊田スタジアムでのトヨタヴェルブリッツのゲームが、対する静岡ブルーレヴズの感染者、体調不良者の状況を踏まえて中止となった。 中村が出場したサンゴリアスとブレイブルーパスの一戦は、前身のトップリーグ時代から両軍の本拠地にちなみ「府中ダービー」として親しまれた。チーム名に地域名を入れるリーグワンでは、両軍とも看板に「東京」と付けて臨んだ。 スタジアムの周りも変わった。試合の興行権が日本ラグビー協会からリーグおよび各クラブに渡った影響か、キックオフの約2時間前から活気に満ちた。 バックスタンド裏側の「おにぎり丸広場」では、口元にマスクを、首元にホスト側であるサンゴリアスのタオルマフラーをつけたファンがキッチンカーの行列に並ぶ。その背後では、特設ステージで両チームが擁する元日本代表の真壁伸弥氏、大野均氏がトークショーに登壇。試合の見どころや現役選手とのエピソードを紹介していた。 試合開始が近づくと、スタジアムでは場内DJが重低音を鳴らし、2階席手前の電飾装置がサンゴリアスの黄色いチームカラーで光った。 選手入場。サンゴリアスの面々がグラウンドへ飛び出す際は、入り口付近で炎が舞った。
スタジアムの収容人数は約50000人。ただし主管権を預かるサンゴリアスは、この日の観客上限を「15000人」と定めていた。新型コロナ禍の社会情勢を鑑みてのことだ。 この日の公式入場者数は「10075人」。田中澄憲ゼネラルマネージャーは、「この1万人というのが自分たちの力。受け止めたいです」と話した。より新規のファンを獲得しなければと猛省し、かえって期待感を促した。 さらに試合後のミックスゾーンでは、サンゴリアスのスタッフ、対するブレイブルーパスの主力選手がクラブの垣根を越えて意見交換。試合の合間に流す場内音楽について、改善点を探っていた。 各クラブがファンを楽しませるための試みは、始まったばかり。アウェイ扱いとなるブレイブルーパスの軸、日本代表で主将経験のあるリーチ・マイケルはリーグワンのスタートをこう受けとめていた。 「トップリーグに比べて演出があり、楽しかったです。各チームの運営も楽しみです」 選手も変化を感じとっていた。 肝心の試合は、壮絶な打ち合いとなった。 60ー46でサンゴリアスが逆転勝利するまで、両軍合わせて計13本のトライが入り乱れた。前半は最後のトップリーグで準優勝のサンゴリアスが、接点でのボール確保、パス交換でミスを重ね、そのこぼれ球を同9位のブレイブルーパスがことごとく拾う。前半終了時の得点板は「24ー27」。ブレイブルーパスが3点リードで折り返した。 いわば挑戦者の側でインパクトを残した1人は、ワーナー・ディアンズだ。 19歳9か月28日。昨年3月に流通経済大柏高校を卒業したばかりも、秋の日本代表デビューを経て、この午後、社会人デビューを飾った。 201センチの長身を活かし、キックオフ、ラインアウトといった空中戦で存在感を示す。攻めてはチーム初を含む2本のトライを決め、人と人との間に駆け込む加速力、フットワークと、力任せではない動きも際立った。 前半8分のフィニッシュは、トップリーグ時代から通算しても最年少記録。当の本人は「そういうの(記録)はあまり考えない。自分のプレーに集中していく」と笑うだけだ。中学時代から日本にいたディアンズと同様、10代で来日したリーチ・マイケルもディアンズを高く評価している。 「(トップリーグ時代の)去年から試合に出してほしかったくらい。東芝のエースにも、日本のエースにもなると思います」