「田舎暮らし」の断片(1)── 移住民が新たに価値を見出した「薪ストーブ」
「カラマツ」という悩ましい存在
もともとゴルフ場は、「カラマツ林を抜ける爽やかな林間コース」という触れ込みで開発されたという。しかし、この「カラマツ」がクセモノなのだ。戦後、特に長野県では盛んに電柱や枕木の材としてカラマツが植林された。しかし、すぐに輸入材やコンクリートに押され、経済的な価値を失った。そのため、今はほとんどのカラマツ林が十分に手入れされていないのが現状だ。「原生林は自然更新ができるけれど、一度人間の手が入った森はそれができない。人工林は間伐を前提に作られているのです」と「八ヶ岳森林文化の会」の南波一郎さんは言う。 この「吉田山」の場合は、ゴルフ場予定地だった約200haを後に市が買い取って「市民の森」と名付け、県の助成金を使い、「八ヶ岳森林文化の会」がボランティアで管理している。「仮に間伐した木材を売ったとしても運送費と人件費で赤字になります。助成金がなければどうにもなりません」と定成さんが言うように、このように里山を継続的に間伐して管理できるケースは稀だ。 加えて、現在の森林法では、木を倒したままその場に放置する「切り捨て間伐」が禁止され、間伐材は全て山から持ち出し、何らかの形で利用しなければならない。だが、多くは薪くらいにしか使えないのが現状だ。しかも、カラマツとなると、薪としても「燃え尽きるのが早い」「温度が上がりすぎてストーブを傷める」などの理由で敬遠されがちなのだ。カラマツの利用を促進するために開発された専用の「カラマツストーブ」などもあるが、広く普及しているとは言いがたい。
里山保全に携わる大半は「移住民」
我が家では外国製のアンティーク級の薪ストーブを使っているが、カラマツを毛嫌いせず、火がつきやすい性質を利用して、炊き始めや火力アップの際に広葉樹と混ぜる形で積極利用している。自分の「田舎暮らし」の現実において、最も安くて手に入れやすい燃料を使わない手はないからだ。 「八ヶ岳森林文化の会」の皆さんは、そこから一歩も二歩も踏み込んで、里山を荒廃から救い、地域活性化に結びつけようという志で動いている。そして、半分予想しつつ驚きもしたのだが、100人弱の会員の9割方は、理事長の定成さんを含め、都会からの「移住民」だという。