「田舎暮らし」の断片(1)── 移住民が新たに価値を見出した「薪ストーブ」
「私と同じ世代の地元の人たちは、戦後の貧しい時代に、学校のストーブの燃料にする薪を山から背負って運ばされていたと聞いています。そして、『こんな辛い仕事は大人になったら絶対にやらんからな』と思って育ったと。もうだいぶ前の事になりますが、実際に地元の人の口から『あんたたちはそれをもの好きにようやるわ』と言われた時に、初めて会に土地の人がなかなか入ってこない理由が分かりました」 このエピソードは都会から地方に移り住んで「田舎暮らし」を志す者にとって、色々な意味で示唆に富んでいる。もともとそこに住んでいる人たちが一度捨てたものを、都会から来た新住民が“復活”させる。「薪ストーブ」一つとっても、「人が動く」ということは、このように価値観や実生活に何らかの変化を伴うものだ。地方の変化はまだ、“創生期”の入り口に立ったばかりである。 ・連載『田舎暮らし』の断片…全4回