トランプ 次期大統領、保健福祉長官にロバート・F・ケネディ・ジュニア氏を任命。美容・健康産業にはどんな影響が?
規制改革提案、健康産業に混乱を招くか
一方、栄養に関するケネディ氏のコメントに続く、美容・健康産業の変化も気がかりだ。これに対するFDAの規制を徹底的に見直したいと、同氏は公言している。「考えられるのは、特定の着色添加物に対するFDAの承認を受け入れることをケネディ氏が拒めば、一部の製品がその影響を受ける可能性があるということだ」とヒンクル氏は言う。「化粧品の成分に関しても、同氏が同様の反応示すことは想像に難くない」。 今回、米Glossyが取材した専門家のうちの数名は、法的衝突を恐れてオフレコを条件に取材に応じてくれた。ある弁護士は、健康産業全体に困惑が広がっていると話す。 「私が見たところ、ケネディ氏は米国内の健康産業の未来に関する対話に大きな混乱を生じさせている。一方では、同氏は代替医療に対する規制の撤廃を提唱している。他方では、まだ初期段階の構想ではあるが、同氏の構想の多くが規制の大幅な強化を求めている」。
PCPCは新規制案に懸念 安全性とサステナビリティを強調
変わる可能性がある分野は、あとふたつある。ひとつは、美容業界内で大きくなりつつあるカテゴリーのひとつ、幹細胞科学の進歩。もうひとつは、サプリメント産業への規制の導入だ。 ミンテルで健康関連産業のアナリストを務めるデビッド・ハムレット氏は、「FDAの規制、とりわけ栄養補助食品をめぐるガバナンスが緩くなる可能性もある。そうなれば、ブランド各社は製品やマーケティングにより柔軟な手法を取り入れられるようになる」と語る。「これによって、一部の企業、特にFDAの基準を満たすことに無頓着な企業は、製品開発で近道を選ぶようになるかもしれない」。 「いずれ規制は栄養補助食品などの領域にも広がる。我々は以前からその心積もりだった。この分野には、いまなお規制による監視が著しく欠けている」と、匿名のある弁護士は語る。「ケネディ氏が規制撤廃の立場を強めすぎるせいで、FDAをはじめとする重要な機関が資金不足に陥らないことを願っている。もしそうなれば、食品や化粧品の大規模な汚染といった、致命的な健康問題が起こるおそれもある」。 パーソナルケア製品評議会(Personal Care Products Council:以下、PCPC)のプレジデント兼CEO、トム・マイヤーズ氏は11月、こんな声明を新政権に向けて出した。 「PCPCが新政権に期待することは多々あるが、とりわけ優先してもらいたいのが、化粧品に対する連邦規制当局の新たな枠組みである『MoCRA』の実施の継続、国際財の流れ、貿易障壁の削減、安全かつ信頼できる商慣行の実施だ」とマイヤーズ氏は声明で述べている。「PCPCは、経済を強化し、製品の安全性を高め、サステナビリティを促進する政策の支持を継続しながら、次期政権への協力を約束する」。 PCPCは、米国内の一流複合企業の大多数が名を連ねる、化粧品およびパーソナルケアのメーカー600社を代表する事業者団体のトップのひとつであり、みずからの利益のためにロビー活動を連邦議会で行っている。