トランプ 次期大統領、保健福祉長官にロバート・F・ケネディ・ジュニア氏を任命。美容・健康産業にはどんな影響が?
ケネディ氏の挑発とMoCRA法案
ケネディ氏は10月、X(旧:Twitter)で次のように述べている。「FDAによる公衆衛生との戦いは終わりを迎えようとしている。FDAで働き、この腐敗した体制に加担している諸君に、私から2つのメッセージを送りたい。1. 自分の記録を保存しておくこと。2. 荷物をまとめておくこと」。 FDAでは現在、約1万8000人が働いている。 米Glossyが今回取材を行った専門家たちが関心を示していたことのひとつは、2022年化粧品近代化規制法(Modernization of Cosmetics Regulation Act of 2022:以下、MoCRA)だ。今年導入されたMoCRAは、80年超にわたって導入されてきた化粧品産業に対する規制の枠組みのなかでも、最大のものだ。 法律事務所のK&Lゲイツ(K&L Gates)でマネージングパートナーを務めるマイケル・H・ヒンクル氏(同氏の専門はFDAの規制と製薬に関するコンプライアンス)は、「大きな驚きや懸念があちこちでわき上がっている。ケネディ氏が保健福祉長官になれば、世界は終わるだろう」。
FDA従来の運営方針を覆す可能性も
その一方で、これには2つの見方があるという。 ひとつは「陰謀論にオープンな姿勢を取ってきた人物であるということは、新しい考えを進んで受け入れる人物であるともいえる」とヒンクル氏は言う。「ポジティブな点に目を向ければ、いかにもFDA的な人物なら思いつきもしない考えに、ケネディ氏なら進んで耳を傾けるかもしれない」。 そのひとつが、さまざまな成分や化粧品の安全な使用の裏付けに必要なデータのタイプの見直しだ。FDAはこれまで、安全テストやデータ収集が遅いことで悪名を轟かせてきた。もしこの見直しが実現すれば、化粧品業界はそのための新たな経路を得ることになるかもしれない。たとえば、MoCRAの2024年の導入には、報告プロセスの実施の遅れをはじめとして、いたるところで遅れが生じている。美容メーカーからのデータの収集にも半年の遅れが生じているという。 市場調査会社ミンテル(Mintel)で健康関連産業のアナリストを務めるリンジー・キャメロン氏は、「科学的確証に頼ることに慣れている企業にとって、これは課題であると同時にチャンスでもある」と語る。「ケネディ氏による『医療制度との戦い』により、消費者の疑念がさらに広がり、薬や美容グッズ、食品などへの精査の目がさらに強まるかもしれない。(中略)そこに生まれるかもしれない信頼の溝を埋めるには、コミュニケーションを戦略的にシフトすること、製品の科学的公正性を強調する一方で、消費者と価値観や懸念の点で足並みをそろえることが必要になってくるだろう」。