「タバコの煙が充満するバス」「選手の住所が載っていた選手名鑑」…今では考えられない昭和プロ野球の“常識”
客席でやりたい放題の客たち
――お客さんも今とは雰囲気は違いましたか? 湯上谷:あの頃のパ・リーグはスカスカ過ぎてスタンドでも周囲に誰もいないから、男女がイチャついている場面とか、テレビでも放送されていましたよね。 ――見てました(笑)。他に変なことをしているお客さんを見たことはありますか? 湯上谷:カセットコンロと食材を持ち込んで、鍋をやってるグループがいたり。びっくりしたのは、川崎球場の客席で野球やってるお客さんがいた時ですね(笑)。 ――プロの選手が目の前で野球やっているのに、自分たちで野球やってるんですか? 湯上谷:そうそう(笑)。あまりにもお客さんがいないから、外野席の広いスペースでこっちを見ないで野球やってましたよ。
選手の住所が載っていた「昔の選手名鑑」
――昔の選手名鑑には、選手の住所が載っていた記憶がありますが、湯上谷さんの自宅住所も載っていましたか? 湯上谷:載っていましたね! 番地までではないですが、福岡の時はあらかたの自宅の場所が。大阪の時は寮でしたから、寮の住所は記載されていましたね。 ――その影響はありましたか? 湯上谷:その影響かはわかりませんが、福岡の時に自宅に子供たちが尋ねて来たのはビックリしましたね(笑)。 ――「湯上谷さんですよね?サインください」みたいな感じですか? 湯上谷:そうです。昔はそんな感じでしたね。近所での噂や情報の伝達は、今より早いイメージです。SNSなんてないのにね(笑)。それから、どうやって知ったのかわかりませんが、富山の実家にファンレターが届いた時も驚きました。 ===== SNSで気軽に交流できるという意味では、いまの選手とファンの距離は近いは近い。ただ、昭和の時代は物理的な接触が容易なほど近かったわけだ。選手サイドにすると面倒が多かったはずだが、日常生活にプロ野球選手が存在する世界をどこか羨ましいなといちファン視点から思ってしまった。 <取材・文/Mr.tsubaking> 【Mr.tsubaking】 Boogie the マッハモータースのドラマーとして、NHK「大!天才てれびくん」の主題歌を担当し、サエキけんぞうや野宮真貴らのバックバンドも務める。またBS朝日「世界の名画」をはじめ、放送作家としても活動し、Webサイト「世界の美術館」での美術コラムやニュースサイト「TABLO」での珍スポット連載を執筆。そのほか、旅行会社などで仏像解説も。
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