平野レミ「〈ここには和田さんが半分入ってる〉樹里ちゃんに言われ、力強く握ってくれた息子の手が嬉しくて。そして料理が気持ちを前向きにしてくれた」
振り返れば、ここまで来るのに、息子にもお嫁さんにも孫たちにも、ずいぶん支えられました。みんなしょっちゅうご飯に誘ってくれたし、遊びにも来てくれて、私を一人にしなかった。 いつだったか長男の唱(ミュージシャンの和田唱さん)の家に行ったとき、樹里ちゃん(妻で俳優の上野樹里さん)に、「和田さんいなくなっちゃって、つかむものがなくなっちゃった。寂しくて寂しくてたまらない」って言ったんです。 そしたら樹里ちゃんが、「唱さん、手を出して。レミさんも手を出して」と。そして唱に「レミさんの手を握ってあげて」って。私の手を力強くギュッと握ってくれた息子の手は、昔はもみじみたいにちっちゃかったのに、がっちりした大人の手になっていました。 そのとき、「あ、つかむものがあった。ここには和田さんが半分入ってる」、そう思えたの。もううれしくて涙が出てきてね。樹里ちゃんには、前を向くきっかけを作ってもらったと思っています。
◆食卓を囲めば笑顔もごちそうに 当時、自分で自分の気持ちを保つために意識したのは、とにかく仕事をガンガンこなすことです。もうそれしかないように思えたから。 でも、仕事を引き受ける前に「和田さんならどう考えるかな?」と自問して、「レミ、こういう仕事はやらないほうがいいんじゃないの?」と言われそうなことには手を出さなかった。 逆にね、新しいことでも自分に合っていそうなこと、好きになれそうなことにはどんどん挑戦しました。和田さんなら「レミ、やってみたら」と絶対背中を押してくれるはずだから。仕事に限らず、何かを決めるときは今も、和田さんの声を聞くようにしています。 それから、部屋が広く見えるようにキッチンやリビングに鏡があるんですが、ふと顔が見えると、不愉快なときは口がへの字になっているの。 そんなとき、鏡に向かってスマイルスマイル。自分から先に笑いかけると、鏡の中の私もちゃんと笑顔を返してくれて、気がつけば心の中もスマイルスマイル。笑えないときでも、笑顔を作れば気持ちはついてくる。鏡を置くだけでいいんだから簡単でしょ。 そして、何よりも私の気持ちを前向きにしてくれたもの、それは料理でした。たとえば、絵画なら目で見て、音楽なら耳で聴いて幸せを感じるけれど、料理は目からも耳からも鼻からも舌からも幸せを感じることができる。これって料理だけの特別な魅力だと思うの。 心を込めて作られたものは絶対おいしいし、食卓を囲めばみんなの笑顔もごちそうになっちゃう。「おいしい」と言って食べてもらえたら、もっとおいしいものを作ろうという気持ちになる。相乗効果で幸せはどんどん広がっていく。
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