なぜNBAラプターズの渡邊雄太は無保証の最低年俸契約から念願の本契約を勝ち取ることができたのか
NBAのラプターズでプレーしている渡邊雄太(26)がチームとNBA本契約を結んだ。今季は無保証の最低年俸契約でラプターズのトレーニングキャンプに参加、プレシーズンでのアピールに成功し、ツーウェー契約でのロスター入りを果たした。 グリズリーズ時代の2シーズンも下部Gリーグのチームに所属しながらNBAに一定期間登録できるツーウェー契約だった渡邊だが、今季は過去2年とは違った。左足首の捻挫で戦列を離れた4試合を除き、開幕から常にNBAのベンチ入り。Gリーグの今季はコロナ禍の影響でバブルでの1カ月間だけだったが、ラプターズ傘下のGリーグチームはプレーオフ準決勝まで進出し、より多くの試合を戦った。それでも渡邊は、ツーウェー契約選手としてロスターに名前があったものの一度もGリーグでプレーすることなくNBAの出場選手登録が続いた。 ラプターズのニック・ナースHC(ヘッドコーチ)は、「選手はコートに出ることによって伸びる」という考えを持っている。そのコーチが、常に渡邊を出場選手登録させ、一時期を除き、ツーウェー契約選手にしてはコンスタントに出場時間を与えたのは、渡邊がそれだけ戦力として考えられていること、渡邊の伸びしろを信じていること、そしてチームが長いシーズンを戦っていく上で必要な存在だと感じているからだ。 今季の特別ルールとして当初設定されていたツーウェー契約選手の出場選手登録は50試合まで。渡邊はその上限に達したらNBA本契約になるものと誰もが予想した。しかし3月にルールが改正され、ツーウェー契約選手はプレーオフまで出場が可能となった。 つまり、ラプターズはツーウェー契約のままで渡邊をシーズン最後まで起用することが可能だったのだ。しかし、あえて高いサラリーを渡邊に支払うことになる本契約を結ぶ選択をした。 それはなぜか。 「我々は、彼が(本契約に)値する選手だと思ったからだ」とナースHCは言った。 「我々には(渡邊を入れるための)ロスター枠があった。彼は優れたプロであり、優れた選手だ。それに努力家だ。間違いなく、彼が今後もこのチームの一員であることを視野に入れている。もし彼が向上すれば、勝ち取れる(ロスター)枠はあるし、出場時間も、そういったたぐいのことはついてくる」と語った。