3メガ・地銀97行にみる組込型金融が盛り上がる理由、BaaS時代が開幕したワケ
オープンバンキングからオープンファイナンスへ、BaaS時代が開幕したワケ
続いて、小俣氏は2010年代から続くオープンバンキング化の道のりを解説した。 まず、2016年に欧州連合(EU)が改正支払サービス指令「PSD2(Payment Service Directive 2)」を策定した。PSD2では、顧客の同意を得てAPI(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)を介し、第三者プロバイダーにデータを共有するオープンバンキング化を義務づけている。日本では「更新系API」「参照系API」と呼ばれているが、2年遅れてオープンバンキング化が始まった。 PSD2では、2021年までにすべてのEU金融機関へPSD2に基づく参照系APIと更新系APIの整備を求めているが、それが金融業界全体がデジタル化に向かう大きな転換点となったと小俣氏は説明する。小俣氏によると、2022年以降は次のインダストリアルデザインとなる「オープンファイナンス」の時代が開幕し、技術的な観点では、BaaSの時代を迎えたことになるとのことだ。 小俣氏は「BaaS時代では、産業を越えたつながりを創る、エンゲージメントという言葉がよく使われている。コロナ禍が始まった2020年以降、eコマースが重要視され、実物経済からネット経済への移行が急速に進み、現在では経済の4~5割以上がネット経済を占めると言われる。しかし、銀行業務(Banking)は実物経済向けに精緻に作られている一方で、ネット経済への対応は進んでいないのが現状」と説明する。 ネット経済では、GAFAのような企業が実際の資産を持たずにサービスを提供している。たとえば、Facebookは記者を雇わずにメディア事業を行い、UberやAirbnbも自らのタクシーや宿泊施設を保有していない。また、実物経済では貸借対照表、損益計算書などを評価して貸し付けている。 一方、ネット経済ではこのような資産のない企業を評価し、金融サービスを提供することから、小俣氏は「新たな金融の在り方が求められる時代に突入しています」と語る。 ■DBX2025開催のお知らせ 本記事で描かれているデジタルバンキングをさらに具体的に見聞きし理解できるデジタルバンキング展(DBX2025)が2025年3月13日(木)・14日(金)に開催される。国内外のデジタルバンキング先進事例を確認できる。
構成:編集部 山田 竜司