3メガ・地銀97行にみる組込型金融が盛り上がる理由、BaaS時代が開幕したワケ
デジタルバンキングにおける3つの最新ホットトピック
小俣氏によると、「組込型金融サービス」「AI(生成AI)」「クラウドセキュリティ」という3つの要素は「組込型金融サービスがAI、特に生成AIとどのような関係性を構築するのか」「クラウド化が進展する中で、セキュリティをどう確保していくのか」などの観点で関連しており、デジタルバンキングのトピックとして多く取り上げられているという。 「日本では約100行ある地銀の約7割が2030年までにクラウド化すると言われています。具体的には、顧客接点用のフロントシステムやコア・バンキングシステムをオープンシステム化し、クラウド基盤を採用していく流れがあります」(小俣氏) 最近、ビッグ3(三菱UFJ銀行、三井住友銀行、みずほ銀行)による地銀囲い込みが、過去のベンダーロックインの形を変えつつあるとも指摘した。 「三菱UFJ銀行は10月1日、『日本IBMとの協業による地域金融機関向けメインフレーム共同プラットフォームの提供について』発表しました。この取り組みはIIJとも連携しながら地域金融機関向けに地域金融機関向けの共同プラットフォームを構築するという発表です。2026年度中に次世代勘定系システム移行完了を目指す三井住友銀行は、法人向けサービスで地銀との連携を深める一方、次世代勘定系システム構築ベンダーとしてNECを選定、インフキュリオンやマネーフォワードと資本業務提携を締結しました。みずほ銀行は9月30日に、地銀の周辺システム構築支援をしている『みずほリサーチ&テクノロジーズの統合に向けた検討開始』を発表しています」(小俣氏) 三菱UFJ銀行の取り組みが、ハードウェアの共同購入だけでなくコア・バンキングシステムの共同開発まで進むのかは、現時点では報道されていない。また、三井住友銀行とNECの取組みが、勘定系にNECを利用している地銀3行にどのように影響するのかもわかっていない。
地銀97行の現状を1枚にまとめると?
主要銀行のオープンシステム化・クラウド基盤採用状況など地銀97行の現状を1枚にまとめると次のようにみえてくるという。 いまや「7割以上が基幹システムをクラウドへ」という状況がさらに進み、メガ3行が各々地銀囲い込み策を講じている。BaaSを担う基幹システムをどのように展開するか、どのようなパートナーと連携するかは、各行の死活問題になりつつある。 地銀各行はオープンシステム化・クラウド基盤を、単なる技術変化ではなく経営戦略実現手段として「デジタルバンキング」と「BaaSによる組込型金融サービス」を考えなければならない段階に来ていると言えるだろう。 一方、小俣氏は、個人的見解と前置きした上で「BaaSによる組込型金融サービスがシステムのクラウド化による新たな収益実現の重要な要素だと理解している地銀は少ないと感じる」との見解を示した。 単にホストコンピューター、専用線の世界がオープンシステム化して、それがクラウド上で運用されるというイメージを持たれていて「要はコストダウンにつながる」とだけ認識されているのが中心だと捉えている。 その上で、クラウド化の本当の意味とは「ネット経済でのバリューチェーンの中で金融がどのように作り変えられていくのか」であり、どのように新しい収益を創り出すかが肝だと説く。まず、その観点を整理する必要があるとのことだ。