3メガ・地銀97行にみる組込型金融が盛り上がる理由、BaaS時代が開幕したワケ
時代の変遷とBaaSの成り立ち、ネット経済への挑戦
ここからは、オープンシステム化の流れとBaaSの成り立ちについて見ていく。 まず、ネット経済の根幹技術である「WWW(World Wide Web)」はティム・バーナーズ=リー氏が提唱して発展してきた。 小俣氏は「一般的にネットの技術、ネットビジネスは10年単位で変わると認識されています」と説明した。WWWが普及した時期である1990年代を「Web1.0」と定義すると、2000年前後に「Web2.0」という概念が流行し始めている。その過程では、アマゾンが書店サービスを始め、GoogleやFacebookなどのサービスが台頭した。 技術的な観点では、Javaアプリケーションサーバ「WebLogic Server」(現:Oracle WebLogic)のバージョン4.0が非常に重要な位置付けになったという。 「オープンシステム化、あるいはJava化する際のフレームワークとしてWebLogic Serverは中心的な意味合いを持っていました」(小俣氏) そして「AWS(Amazon Web Services)」が誕生した2006年まで、いわゆる「GAFA」が勃興した時代までがWeb1.0だったと定義する。 その後、2000年前半にインターネットバブルのドットコムの崩壊が起きている。そこからeコマースが勃興して「SNS」の時代へと移り、2007年、2008年に「iPhone」と「Android phone」が登場した。 小俣氏は「デジタルバンキングを語る上では、こうした変遷は非常に重要。さらにリーマンショックが起こった2008年に金融機関で大量の解雇が発生した際、人々がシリコンバレーに集まったことで、ここからフィンテックの時代が訪れた」と説明する。 当時は「ネオバンク」の代表格であったSimpleやMoven、SoFi Technologies(いずれも米国)などの企業が勃興して、その後、Stripe、Chimeなどが創業して「伝統的な金融機関がなくなるのではと言われた時期があった」と同氏は振り返る。 そして、2013年ごろから本格的にデジタルバンキング時代へと移行することになる。2010年初頭の状況は、2014年ごろからフィンテックという言葉が取り上げられ始めた日本とは異なり、グローバルではデジタルバンキングも併せて普及し、N26やNubank、mBankなどが創業している。 この2013年前後に台頭したのが「Web3.0」と言われている。ただ、正確な開始時期は定かではなく、小俣氏によると「欧米諸国の認識では、デジタルバンキングの台頭時期が当てはまる」とのことだ。 Web1.0をWWW世界、Web2.0をSNS世界と分類すると、次の世代となる「Web3.0」時代は「IoV(Internet of Value)の世界」と定義できる。一般的には、すべての物事がインターネットでつながる「IoT(Internet of Things)」という概念が広く知られている。ただ、小俣氏は「インターネット上で価値あるお金の取引が行われる世界としてIoVの時代(仮想通貨や分散台帳技術、ファースターペイメントなど)がIoTの前の時代として認識されています」と説明する。 Web3.0と同時期に提唱された概念としては「web3」も広く認知されている。小俣氏は「両者の関係性を説明するのは難しいが、Web3.0はWeb1.0、Web2.0の続きを意味する言葉だ。一方、web3はそれらと関係性がなく特別に存在する要素と捉えられる。混同されることが多いが2010年代はIoVの世界と考えてもらってよい」との見解を示す。 その2010年代に起きたこととして、小俣氏は「チャレンジャーバンクの登場」を挙げる。 「既存の銀行と提携しているケースが多いネオバンクではなく、自ら銀行免許を取得するチャンレンジャーバンクがIoVの世界で誕生したのです。2014年ごろからオランダではBunqが、英国ではRevolut、OakNorth、Starlingなどのチャレンジャーバンクが創業しています」(小俣氏) さらに、技術的な観点では「ブロックチェーン」技術を活用して、ゲーム内通貨からInternet of Valueへと転換させる研究も始まったとのことだ。