もしあなたが《余命宣告》を受けたらどう行動するのが正解か…? 美しい最期を実践するための「10の心得」
手放すことで心が軽くなる
終末期にはそれまでの「当たり前」は通用しなくなる。身体は重くなり、それに同調するかのように心も暗くなりがちだ。 とくに現役時代にサラリーマンとして競争社会を生き抜き、道を切り開いてきた人は、自分の身体を思うようにコントロールできないもどかしさから、心が沈みがちだ。そんなときは、大切にしてきたものを手放し、託すことで心が軽くなる。 「まずは『自分でなんでもできて当たり前』『役に立たない自分に価値はない』という気持ちから解き放たれることが必要です。そのために、それまで大事にしていたものを誰かに託す。自営業を営んできた方であれば、自分の価値基準や理念を大切にしてくれる人を見つけ、継承する。 具体的なモノでもいい。たとえば、趣味の道具を誰かに譲るだけでも心は救われます。釣り好きな人なら、もう釣りに出かけられないことを嘆くのではなく、竿やルアーを同じ趣味を持つ若い世代に託す。自分が大事にしてきた釣り道具が持ち主を変えて、使われ続けるのは大きな喜びとなり、生活に穏やかさが戻ってきます。死を前に抱えているものを少しずつ手放していけば、心も軽くなっていきます」(前出・小澤氏) もし今日が人生最後の日だとしたら、どう過ごすか想像してみると、自分にとって本当に大切なものに気付くことができる。 埼玉県在住の後藤和子さん(仮名・75歳)の夫、直樹さん(仮名・享年81)は、お酒を飲むことが何よりの幸せだった。 「夫は日本酒で晩酌するのが好きで、銘柄はきまって菊正宗でした。それをグラスなみなみで1杯、毎日飲んでいました。 そんな夫に末期の大腸がんが見つかったのが、去年の暮れのこと。『最期は家で』という強い意志を持っていたので、在宅医療を受けることになりましたが、夫はほとんど動けなくなる直前まで晩酌はやめませんでした。お医者さんも当初は怒っていましたが、『俺はばぁさんと話をするのが幸せなんだ。酒を飲むのは、そのためのただの口実だったんだよ』と打ち明けてくれました。保険営業のサラリーマン時代は、子育てなどで夫婦の時間なんてなかったのですが、最期になってお酒がまた私たちにその時間を取り戻させてくれました。やっぱり、最期まで自分らしく生きることが何より大事なんだなと気づかされました」