ブラジル期待FWビニシウス封じに成功した長友佑都が感じた森保Jの課題と収穫「最終的な部分で個の力を伸ばさないといけない」
ブラジル戦で日本は4本のシュートを放ったが、ゴールの枠をとらえた一撃は「0」だった。同じような展開で勝ち点を手にするには、言うまでもなくゴールが必要となる。カタール大会までに、森保ジャパンは何を上乗せしなければいけないのか。ブラジル戦で得た教訓を、長友は「個の力で剥がすこと」と位置づけた上でこう続けた。 「最終的にはアタッキングサードのところで、個の力で剥がせないと本当の意味でのチャンスを作ることも、世界で勝つことも難しい。サッカーなのでセットプレーやカウンターで取れたりすることもあるけど、実際に勝てる確率を増やしていかないとベスト8より先には行けない。やはり最終的な部分で個の力を伸ばさないといけない」 もちろんブラジル戦でも、日本は個の力を前面に出してゴールに迫った。 しかし、アジア最終予選で無双状態だった伊東は、スピードで右サイドを突破してからのクロスという得意な形に持ち込めなかった。後半27分から伊東に代わって投入され、左ウイングに入った三笘薫(25、ユニオン・サンジロワーズ)は十八番でもあるドリブル突破を、対面の右サイドバックに回ったミリタンに2度、完璧に止められた。 三笘は試合後にこんな言葉を残しながら唇をかんでいる。 「(自分が)フレッシュな状態で対峙したのに、相手が疲れているなかでも対応されてしまった。自分がそういう実力であることが、あらためてわかった」 スピードやテクニック、フィジカルの強さなどといった個の力を、カタール大会までに飛躍的に伸ばす作業は難しい。しかし、ボールを持たない味方が意図的に局面に加われば相手を惑わせ、結果として個で剥がせる確率が増すと長友は指摘する。 「味方のサポートやフリーランニングなどで、相手を引きつけるポジショニングが取れれば。今日も(三笘)薫のところでミリトンの世界レベルの守備の強度を見せられたけど、いろいろなところにサポートがいる状況での1対1だと剥がせる場面もあるんじゃないかと。もちろん一人ひとりがこの半年でもっと突き詰めていく必要もあるけど、味方との連携で相手のマークのずれ、意識のずれを引き起こせると思っている」 相手の判断を迷わせ、後手に回らせるコンビネーションならば、残された時間でも構築できる。伊東とのパス交換で長友が右サイドを突破した後半13分に訪れた、ブラジル戦で最大といっていいチャンスが可能性を示している。伊東の単独突破が頭のなかにあった分だけ、長友への警戒心が薄れていたからだ。 ビルドアップ時のパスが乱れ、奪われた直後にショートカウンターを発動された場面も少なくなかった。それでもピッチ上の11人が一丸となって守り続け、ブラジルをいら立たせる粘りは体現できた。残された課題はゴールへの道筋。13度目の挑戦でもはね返されたサッカー王国から、悔しさや無念さとともに貴重なヒントが与えられた。 (文責・藤江直人/スポーツライター)