城氏が「パラグアイ戦でアピールに成功した人とできなかった人」をチェック。異質存在感で“当確”鎌田と伸び悩む久保
日本にとって6月に組まれた4試合は26人に増えるとされるW杯の最終メンバーの椅子を争うサバイバルマッチである。W杯出場を逃したパラグアイと「なんとしてもW杯に出たい」と生き残りを必死にアピールし、森保監督の目指すサッカーをすることを90分間通して体現した日本の選手との熱量とモチベーションの差が如実に1-4のスコアに反映された。 パラグアイは、伝統的に堅守を誇る南米の強豪ではあるが、この日はコンディションも悪く、プレッシャーもかけてこず、本番までの数少ない強化試合の相手としては、残念で物足りなかったが、新型コロナの影響もありマッチメイクは難しかったのだろう。 本来であれば、5か月先にW杯を控えているこの時期は、メンバーを固めてチームの連携や戦術をより成熟させておかねばならない。しかし、新型コロナ禍で思ったように強化試合が組めず、試合数も少なくなったのだからこの点も仕方がない。この6月シリーズが、本当に最後の選手選考の場となる。 その中でアピールに成功した選手とできなかった選手がいる。 成功組の筆頭は鎌田だろう。4-3-3の左のインサイドハーフでフル出場。再三のチャンスを演出して1ゴール1アシストをマークした。トップで起用された浅野と前田がボールを収めるタイプではなかったため、鎌田と堂安が起点となってパラグアイゴールに迫るケースが目立った。 特筆すべきは前半42分のゴールだ。右サイドに張っていた堂安がボールを持つと、鎌田が絶妙のタイミングでゴール前へ動き出した。堂安のクロスにヘッドを合わせ、そのコースを変えると、相手GKの左肩に当たってゴールネットを揺らした。 ボールに触ること自体が難しいプレーだが、それを可能にしたのが、動き出しのタイミングと、冷静な判断力、そして180センチの長身という強みだ。
ボールの置き方と独特の間合い
とにかくプレーが落ち着いている。 後半に入っても23分に堂安のパスに反応した飛び出しでGKのミスを誘ってPKを得た。30分にはエリア内で冷静にボールを浮かせて前田に合わせ、40分には前田の折り返しを田中碧へ通して、ダメ押しのミドルシュートをお膳立てした。 ボールを受ける技術が高く、相手が体をぶつけてきても平気なキープ力に加えて、スルスルと相手ディフェンスを抜けていく一種独特の突破力がある。 ディフェンスの隙間を見つけ、足の出てこない位置、相手の重心の寄りという細かいところまでも見て判断するそのボールの置き方と独特の間合いが素晴らしい。足も長いからディフェンスを戸惑わせ切り返しもできる。自らの肉体的なストロングポイントを生かしたプレーができている。 これまで代表ではトップ下、あるいは1.5列目を任されてきたが、うまく機能しなかった。だが、所属するフランクフルトでヨーロッパリーグを制覇。そこで揉まれながら自信をつけ大きく成長した。フランクフルトでは、インサイドハーフではなくシャドーで起用されているが、これだけのパフォーマンスができれば計算ができるし、26人のメンバー入りは当確だろう。大迫がトップに入ったときにハイプレッシャーの中で共存できるのか、どんな連携が生まれるのかも見てみたい。 4か月ぶりの代表復帰となった堂安も存在感を示した。体のキレがよく、右サイドで攻撃の起点を作った。PKを失敗、点を取りたくて空回りした部分もあったが、プレーに気迫があった。 一方、アピールできなかったのはパラグアイに1点を献上してしまった守備陣だろう。後半14分。谷口が1対1で抜かれ、伊藤もカバーしきれなかった。伊藤は左のサイドバックとしてプレーした前半には光るものがあったが、後半にセンターバックで起用されると、必要以上に深い位置にいてパラグアイに攻撃の時間を与えてしまった。