ムーンウォークさながら「宙に浮く靴」、大阪市の靴メーカーが万博に出展へ
2005年、前に体重をかけると、てこの原理でスムーズに歩けるげたの構造にヒントを得た「リゲッタ」を開発。足の負担が少なく、快適な歩行を手助けする自信作は、国内外で人気を博した。 「メーカーになんてなれるわけがない」。そんな見方をはね返し、潰れかけた会社を新たなチャレンジによって立て直した経験があるだけに、斬新な試みの「宙に浮く靴」への思いも強い。昨年11月、万博に出展する各国の担当者に、「宙に浮く靴」の試作品を披露すると高評価を得た。しかし、万博本番までに「突拍子もない発想をもっとバージョンアップさせ、見るだけで楽しめる靴にしたい」と意気込む。
約10年前に亡くなった父と一緒に、会社の礎を築いた母親(81)は高齢で足も不自由になってきた。通院などに付き添う中で、介護される人と介助者の双方の負担が軽くなるような靴づくりに、「宙に浮く靴」の技術を生かしたいという思いも抱いている。 自分が生まれる前の1970年の万博では、「人間洗濯機」など、新時代の暮らしを予感させる技術が展示された。その万博に技術を披露する側として参加することに、高本さんは心躍らせる。「万博って、未来に向けて、みんながアイデアを出し合うブレーンストーミングの場だと思う。それぞれが描く未来の一風景に、宙に浮く靴を履いた人がいればうれしい」 (佐藤祐介)
履物製造業者、大阪市生野区に集積
大阪市生野区は戦後、小規模な工場が密集する「ものづくりのまち」として発展してきた。2021年の総務省経済センサス活動調査では、区内の製造業の事業所数は1621か所で、大阪市内の24区では、平野区に次いで2番目に多い。 中でも、戦前のゴム履物づくりに由来を持つ、サンダルなどの履物製造業者が集積している。裁断、縫製、靴底貼りなどの製造に関する各工程を、従業員数人の専門の小さな事業所が手分けして担当。1階を作業場とし、2階に住居を構える、職住一体化した事業所が路地裏に軒を連ねる。 高本さんは「万博に出展することで、<オール生野>で生産する良質の履物の存在をより多くの人たちに伝え、地域経済が発展すればうれしい」と話す。