MEMS(メムス)とは何か簡単に解説、マイクなど「1人100個超」使用している身近な技術
MEMSが「小さいほど良い」理由
基本的にMEMSは同じ性能なら小さいほど良いとされる(製品として高い競争力を持つ)。まず、スマートフォンのように複数のMEMSを搭載する場合、小さいMEMSほど、搭載製品の薄型化・小型化を実現できるなど、設計の自由度が広がる。 また、小さいほどコストメリットも得られる。たとえば1ミリメートル角のMEMSは、3ミリメートル角のMEMSに対し、約10倍のコストメリットがある。 これは、基板となる8インチ(200ミリメートル)の円形シリコンウェハーの場合、その上に製造できるMEMSの数には1ミリメートル角と3ミリメートル角とで、それぞれ約3万個、約3千個と約10倍の差が出るからである。MEMS小型化によるウェハー1枚あたりの製造コストは大幅に変わることはないため、MEMSは小型化するほどコストメリットが出る。
MEMSの歴史
MEMSの起源は、20世紀半ばにさかのぼる。最初に開発されたMEMSについては、議論が分かれており、1951年の米エレクトロニクス企業RCA社(※現在はゼネラルエレクトリック社に買収された)が最初とする説、1963年にトヨタ自動車グループの豊田中央研究所が開発した圧力センサーを推す説、1967年にウェスティングハウス・エレクトリックのハーベイ・C・ナサンソンらが開発した共振ゲートトランジスター(一種のフィルター)が最初のMEMSであるという説がある。 当初、MEMSが多く採用されたのは自動車であった。1980年代には、排出ガスの浄化装置の一部にMEMS圧力センサーが採用された。1990年代になると、MEMS加速度センサーが自動車の衝突を検知し、エアバッグを作動させるセンサーとして採用されている。さらに、自動車の横転・スピン防止のためのセンサーとしてMEMSジャイロセンサーも採用された。 さらにMEMSは、スマートフォンの普及をきっかけに爆発的に市場を拡大させた。前述の通りである。スマートフォンだけでなく、ワイヤレスイヤホンやスマートウォッチ、AIスピーカーなどMEMSを複数搭載している関連機器を考えると、1人が日常的に利用しているMEMSの数は、100個以上に及ぶ可能性がある。