料理家、作家・樋口直哉さんの【土地の思い出と共に心に残る、旅先での一期一会】
【買ってよかった2024 クロワッサンの太鼓判! 旅先の逸品部門】伝統食やローカルフード、工芸品などに出合うのは旅の醍醐味。旅好きの嗅覚で見つけたお気に入りを聞きました。
樋口直哉(ひぐち・なおや)さん 料理家、作家 科学の考え方で料理をよりおいしく作る方法を提案。著書『もっとおいしく作れたら』『樋口直哉のあたらしいソース』など。
(広島)『藤本農園』 藤本さんのお米と合鴨
長年、合鴨農法に取り組んできた藤本農園さん。農薬、化学肥料を一切使わずに育てたお米が高い評価を受けています。 お米自体は以前に食べていて、もちろんおいしかった。ようやく今年、農園を訪れることができました。 農園がある庄原市東城町(とうじょうちょう)は、田んぼと川の景色が広がるいいところでした。合鴨たちが田んぼで働いていますが、大きく成長すると稲を倒してしまうので働けなくなります。その合鴨をどうするかというと、食べるわけですね。お昼にごちそうになったご飯と合鴨のおでんが、めちゃくちゃおいしかったです。小さな命が働いてくれるおかげでおいしいお米を食べられて、それに感謝しながら肉をいただくというのは、食の根幹の部分。印象に残っている旅の思い出です。
鴨小舎(こや)の鴨たちはガーガーと鳴いてかわいいんですよ。ちなみに小舎にはアヒルもいて、アヒルはリーダー的存在らしいです。 広島県庄原市東城町粟田2939 藤本農園内 食と農の情報発信基地「あいがも屋」
(徳島)『服部製糖所』の和三盆の糖蜜
徳島県のおいしいものを探る旅をしていたときに出合いました。阿波和三盆糖といえば、砂糖の最高峰。糖蜜を分離させて作るのですが、明確な規定がないため、製糖所によってそれぞれ味わいが違います。産地に行くといろいろと発見があるもので、サトウキビが在来種だというのにも驚きました。「竹糖」という品種で、沖縄などで栽培されるものと比べて小さく、収穫量も少ないため、とても希少だそうです。 服部製糖所は1864年創業の歴史ある製糖所。竹糖の自社畑も所有しています。和三盆糖を使ったシュークリームやソフトクリームを味わえるスイーツ店が併設されていて、そこも良き場所でした。買って帰ったものは、サトウキビの搾り汁を煮詰めた糖蜜(モラセス)。甘みだけではなくやや酸味もあるのが特長で、料理にも使えます。バーベキューソースなどにもよさそうです。 徳島県阿波市吉野町西条東姥御前270 TEL.088・696・5270