労働組合の全国組織「連合」は本当に「はたらく人」の味方なのか…政治・経団連との距離感を会長に聞いてみた
連合と政治家との付き合い方
ところで、芳野会長はこれまでの連合会長に比べて政治的な発言が多く、共産党に対して厳しい態度だと個人的には感じていたので、そのことについて率直に本人に聞いてみた。 「いやいやいや、変わらないですよ。全然変わってないんですよ。私より(前任会長の)神津(里季生)さんのほうがもっと厳しいこと言ってましたから。 なぜ共産党について今までの歴代会長と同じことを言っているのにこんなに言われちゃうんだろうと思っていたら、周りの人たちが昔の記事を集めてくれて、『いや神津さんのほうがもっと厳しいことを言ってたから大丈夫ですよ、芳野さん』とかって言われました。 メディアが政治ばっかり聞くからです(笑)。私が会長になった時が2021年 10月で、ちょうど総選挙の真っ只中だったんです。その時に共産党との関係で『あり得ない』とかって言って、それが見出しになって、凄くそこが取り上げられていて、そこからなんか共産党アレルギーとか凄く書かれて。連合の記者会見でも、政治のことばっかり聞かれて」 自民党など与党の政治家との付き合い方についてはどう考えているのだろうか。一部報道で、『こんな時期に自民党の人とご飯食べないでください』と連合幹部に叱られたという記事が書かれたことについても、聞いてみた。 「えっと多分その叱られたのは麻生先生とお会いした時で、ちょうど春闘の時でお叱りを受けたんですけど、それも本当はもっと前に決まってたんですが、ちょっと日程が合わなくてずれ込んでそこになってしまったんですよね。 私、自民党の先生とお会いしても、『支援する』とは一言も言っていなくて、むしろいい距離感で信頼関係を持っている。要は仲間が居るってすごく力強いことじゃないですか。 そういう意味では、やはり信頼関係をいろんなところに作っておくってとても大事だと思いますし、お会いして連合の考え方をお伝えして行く。 伝えたからってすぐそれが実現するわけではないですけれども。こちらの考え方をやはりご理解いただく方をたくさん増やしていくということも、結果的には連合組合員のメリットにはなるので。 まあいろいろ言われましたけど、今誰も言わなくなっています(笑)。いろんなことが実現出来ているので、政労使(政府、労働組合、企業経営者)の意見交換とか、地方版政労使会議だとか、こちらからの要請に対して政府が答えてくださっているというのは、やはり一定程度の信頼関係があるので。 信頼関係って結びついたということではなくて、“話せる間柄”になったっていうんでしょうかね。こちらの考えもちゃんとお伝えすることができるようになったので、自民党サイドからしても、“いいものはいい”という判断で、多分そこの考え方があって、政労使会議など要請に基づいてやってくださっていると思うので。 労働組合としては政策実現に向けて私は是々非々だと思っているので、自民党だけではなくて、公明党さんともお話をして、こちらの考え方をお伝えします。連合として政策を実現して行くためには、政治の力がとても必要なので」 *** 直接お会いする前は、失礼ながら怖い感じの人なのかなと思っていたが、実際にお会いした芳野会長はいつもニコニコしていて、そのミュニケーション能力の高さは、相当なものだと感じた。 「いやいやいや、私全然コミュニケーション能力ないと思いますよ」 政治家にならないかと、誘われたりしないのだろうか。 「しないです。(過去にないですか?)ありましたけど、ないです(笑)」
春川 正明(ジャーナリスト)