第164回芥川賞受賞会見(全文)宇佐見りんさん「ただひたすら目指すものを書いていく」
中上さんに引かれるのはどういうところか
読売新聞:すいません、ちょっともう1点だけ最後にお聞きしたいんですが、中上さんがお好きだという理由の中で、先ほども質問がありましたが、中上さんは路地というテーマ、あるいは地域社会、地縁・血縁が濃い地域社会という、ご自身が育った基盤というものがあって、素晴らしい言葉でそれを紡がれていったわけですが、宇佐見さんの場合はそういうご自身の基盤となるものというものがどういったところにあって、あるいは中上さんに引かれるのはそういう路地というテーマの部分なのか、それとも言葉の部分なのか、より、どちらなのかというのをお聞かせください。 宇佐見:私は言葉というよりも文章そのものが。やっぱりいい文章っていうのは読んだだけで、光であるとか、ふって息をつく感覚であるとか、そういうものが入ってくるんですよね。でも、文章と、今おっしゃっていただいた路地とか、そういう書かれているものと書いている語り口っていうのは不可分のものだと思っていて。だから、私の中で響いたのは、たぶん彼の書く血縁であるとか、そういうところなんじゃないかなっていうふうに思います。どちらかというと文章そのものに引かれましたね。 読売新聞:ありがとうございます。 宇佐見:ありがとうございます。 司会:ありがとうございます。その【*******】。先ほどちょっと立たれたグレーのセーターの方、どうぞ。お願いします。
環境ががらっと変わる中で思うことは
朝日新聞:朝日新聞の山崎と申します。このたびはおめでとうございます。 宇佐見:ありがとうございます。 朝日新聞:宇佐見さん、昨年、最年少で三島由紀夫賞を受賞されて、2作目で、憧れだったとおっしゃっていた芥川賞ですけれども。すごい環境ががらっと変わる中で、今思うことってありませんか。 宇佐見:ありがとうございます。自分の中では、小説を書いている時間と、小説が発表されていろいろ感想をいただくとか、評価をいただく時間っていうのがだいぶ離れているんですよね。なので、書いてるときはかなり孤独だったりとか、編集さんとやりとりしてやっていくので、今は3作目を書いてる途中なんです。 だから、すごいうれしいなって、舞い上がる気持ちもあるんですけど、でも、そうですね、今は3作目に集中することとか、『かか』で三島賞を取ったとき、いただいたときでいえば、そのとき書いていたものとか、エッセーであるとか、そういうものに注力したいなというふうに思ってたので、そうですね、評判、悪い意味で振り回されることもなくいきたいなというふうに思っています。 でも、やっぱり感想とかSNSとかで見たりするんですけど、やっぱり、声が届いたんだなっていうふうなことをすごく強く感じるときがあって、そういうのを感じるとやっぱりうれしいですよね。うれしいっていう言葉でしか言い表せないのが苦しいぐらい、うれしいです。 朝日新聞:ありがとうございました。 宇佐見:ありがとうございます。 司会:ありがとうございます。あと2問ほどとさせてください。それで、これまでに質問されていない媒体の方にさせていただきます。では、一番後ろの。