第164回芥川賞受賞会見(全文)宇佐見りんさん「ただひたすら目指すものを書いていく」
今後向き合っていきたいテーマは
共同通信:すいません、じゃあちょっと中上さんに関連して、もう1問だけお伺いしたいんですが、中上さん、言ってみれば宇佐見さんの推しだと思うんですけれども、中上さんといえばやっぱり路地という、書くべき世界というのがあったと思うんですけど、ご自身にとって何か、これから向き合っていくべき、書くべきテーマなり、ありましたら、向き合っていきたいテーマなり、ありましたらお聞かせください。 宇佐見:ありがとうございます。中上さんといえば路地というものがテーマになっていて、私の中では今のところは家族とかが大きなテーマになっているんじゃないかなというふうに思うんですけど、でもまだ新人ですし、そんなに本も出してないこともあって、これから広がっていくかもしれないです。 共同通信:ありがとうございました。 宇佐見:ありがとうございます。 司会:ありがとうございました。また挙手をください。そちらの5番目の一番【後ろの方】、お願いします。すいません、後ろの方。
3番目の若さでの受賞をどう感じているか
読売新聞:読売新聞の【タケダ】と申します。このたびはおめでとうございます。 宇佐見:ありがとうございます。 読売新聞:まずお聞きしたいのが、今回、島田委員が、一見、刹那的に繰り出していくような言葉に見えるけれども、それが実際、非常によく吟味された言葉なのではないかというふうに、高い評価を委員の方々がされたというふうにおっしゃっていたんですが、その辺り、言葉の選び方というものについて、この作品でどのように向き合われたかを教えてください。 宇佐見:ありがとうございます。選考委員の先生方の言葉は今、初めて聞くので、すごくうれしいなというふうに感じました。小説っていうのはやっぱり自分の中で、読む時間でいったらすごく短いんですけど、私は結構、時間を掛けて書いていくタイプなので、文章そのものに対して最適解というか、これだなっていう言葉を探していくのがすごく楽しい。苦しいんですけど、それが当てはまったりとかしたときはうれしくて。吟味されている。吟味しているって自分で言うのはちょっと恥ずかしいんですが、でもそう言っていただけたのはすごくうれしいなというふうに思います。 読売新聞:すいません、もう1点なんですが、今回、綿矢りささん、金原ひとみさんに続く史上3人目の若さ、3番目の若さでの受賞ということになりましたが、若い女性の活躍という観点や、単純に、ご自身が3番目の若さで受賞されたということについて、どのように感じていらっしゃるかお聞かせください。 宇佐見:ありがとうございます。自分としましても、もっと長い目でというか、まさか21、自分の予定よりも早かったと、そんな言い方になっちゃったな。すごく早かった、信じられない気持ちなんですけど、でも、まだ自分の中で至らない部分っていうのは、若さ故なのか、普通に自分の力なのか分からないですけど、やっぱり自分ですごく強く思っているところはあって。 先ほど中上健次さんが推し作家であるというふうに言ったんですけど、彼の作品は本当にすごくて、3回、人生を繰り返しても追い付かないんじゃないかっていうぐらいすごい文章を書かれる方で、賞がどうこうとか、そういうことに、すごくありがたいとちゃんと受け止めつつ、自分でそれに振り回されないで、若さとかそういうものに振り回されないで、ただひたすら自分の目指すものを書いていくっていうのが、結局は賞をいただいたこととかへの恩返しになるんじゃないかなっていうふうに思っていますね。大丈夫でしょうか。