国が日本海溝、千島海溝沿いの巨大地震の被害想定公表 最悪の場合、20万人弱死亡も
ひとたび発生すると巨大な津波を引き起こし、北海道や東北北部の太平洋側を中心に甚大な被害が出ると考えられている日本海溝、千島海溝沿いのマグニチュード(M)9クラスの巨大地震について、国は21日、被害想定を公表した。防災対策の必要性を国民に知らせたり、国や地方自治体の防災対策の基礎資料とすることが目的だ。想定によると、最悪の場合、20万人弱の死者が発生。その大半が津波による被害だという。 今回、被害想定が公表された日本海溝、千島海溝沿いの巨大地震は、科学的知見に基づく最大クラスの地震。いずれも2011年3月の東北地方太平洋沖地震(東日本大震災を引き起こした地震、M9.0)と同じように、陸側のプレートの下に太平洋プレートが沈み込んでいるプレート境界を震源とする。発生頻度は極めて低いものの、過去の発生状況を踏まえると、いつ発生しても不思議ではないと専門家が考えている地震だ。 国は、2020年4月(岩手県は同年9月)に、これらの地震で想定される津波高と浸水域を公表。北海道から千葉県までの太平洋側の広い範囲が津波に襲われ、その高さを岩手県の宮古市で約30メートル、北海道のえりも町沿岸で約28メートルと推計した。岩手県中部以北では、東日本大震災の時よりも大きな津波に見舞われるという。 今回、このような津波を引き起こす巨大地震が発生した場合の人的被害や建物被害などを、東日本大震災など過去の大規模地震の被害状況を踏まえた手法を使って推計した。ただし、被害の様相を大きな視点でとらえようと試みたものなので、必ずしも想定通りのことが起きるわけではない点に注意してみていく必要がある。 公表された被害想定によると、死者数は日本海溝モデルの場合約6000~19万9000人、千島海溝モデルの場合約2万2000~10万人。建物の全壊棟数は日本海溝モデルの場合約22万棟、千島海溝モデルの場合約8万1000~8万4000棟。経済的被害額は日本海溝モデルの場合約31兆3000億円、千島海溝モデルの場合約16兆7000億円。 死者数が特に多くなると考えられているのは、巨大地震・津波が冬の深夜に発生した場合だ。多くの人が就寝中で避難の準備に時間がかかるうえ、北海道・東北という積雪寒冷地特有の特徴として、積雪や凍結で避難時の移動速度が低下するため、この季節、この時間帯の津波被害が最も多くなると見込んだ。 また、同じく積雪寒冷地の課題として、津波から難を逃れた後に屋外で長時間滞在しなければならない状況に置かれることで低体温症になってしまう人の数も初めて推計。対策を進めないと、最悪の場合、日本海溝モデルで約4万2000人、千島海溝モデルで約2万2000人が避難後に低体温症により死亡のリスクが高まると見込んだ。 被害想定を公表した内閣府は「被害想定は、効果的な対策をするための資料として作ったもので、対策を講じれば被害量は減らすことができる。行政だけでなく、企業、地域および個人が対応できるように備えることが必要」としている。