私たちはみんな、エイリアン。中国籍、日本生まれ日本育ちのチョーヒカルさんと語る、自分を愛すること
「小さい場で、まだ小さいうちに差別を止めることもできる」
―最後に、みんなにとっての安全な場所をつくる動きが増えてきているとはいえ、現実世界は嫌なこともたくさんあって、アメリカはトランプさんが当選し、マイノリティの人々にとっては過酷な現状もあると思います。そのなかでどうやってサバイブしていくかということについて、チョーさんの考えを聞かせてください。 チョー:難しいですよね。根本的に、私は性善説を信じてしまっている人間なので、話し合うことはあきらめないほうがいいと思っているんですね。人間はほかの人間を思いやることができると思っているので、それをなくさないようにしたい、とすごく思います。同時に、人間には自分のグループと自分以外のグループみたいに分けてしまう性質があると思うので、他者になった瞬間、急にどうでもよくなったり想像力が働かなったりしてしまう。そこになんとか働きかけていきたいという気持ちがあります。 ただ、日常的なサバイブに関しては、やっぱりもっと実用的な手段が必要だなと思いますね。それこそガザのことであればちゃんと募金するとか、当事者の人がいる場でLGBTQ+に関して問題のある発言をしている人がいたら、ちゃんと直接それはおかしくないですかって言うとか、もっと直接的なアクションがないとサバイブしていくのは難しいと思います。 でも、そういう小さいところから変わっていくものだとも思います。差別って、それによって暴力も起きますし、すごく大きな問題な感じがするじゃないですか。だけど本当に小さいグループのなかで起きる会話とか、空気感みたいなものからどんどん派生して、人間は他人への想像力を失っていくものだと思います。だから、逆に言えば、我々はそういった小さい場で、まだ小さいうちに止めることもできると思います。 みんな生きていくだけで大変だと思うので、本当に自分に余裕があってできるときでいいと思いますが、ちょっとだけ勇気を出して何かひとこと言ってみると、その分だけ良くなっていくと信じています。
インタビュー・テキスト by 生田綾 / インタビュー by 南麻理江 / 撮影 by 野中愛