私たちはみんな、エイリアン。中国籍、日本生まれ日本育ちのチョーヒカルさんと語る、自分を愛すること
日本生まれ日本育ちで、国籍は中国。アイデンティティについての変化
―先ほどチョーさんが「私は私と思いつつもグループに属したい気持ちには抗えなかった」とおっしゃっていたのが印象的だったのですが、ニューヨークに住むようになって、ご自身のアイデンティティに関する向き合いかたに変化はありましたか? チョー:私は中国籍で、日本にいたときは親が中国語を話す環境で育ったので、まわりから中国人として扱われてきたし、私も自分のことを中国人だと思って生きてきました。それがニューヨークに行ってから、初めて自分はめちゃくちゃ日本人だなと思ったんですよね。 考えてみたらそれは当然でもあって、私は日本生まれ日本育ちなので、第一言語も日本語です。日本のご飯と文化も身体に染み付いて大きくなって。ニューヨークに行ってから、はじめて中国生まれ中国育ちの同年代の友達がたくさんできたんですが、その子たちと喋っているとき、「あれ、自分は全然日本人じゃん」という自覚を持ったんですね。 日本に住んでいるとき中国籍であることでちょっと嫌な思いをすることもあったので、もう国籍からも国というものからも解放されたいみたいな気持ちも結構あって、それでニューヨークに行った部分もあったんです。なのに、逆に自分にある日本のルーツに気づいてしまって。 ―国籍というものから脱したいと思っていたのに、逆にそうではなくなったと。 チョー:思っていたよりも深く身体に日本が染み込んでるんだなと。私は日本で生まれ育って、私の大元にあるのは日本のカルチャーであるということをようやく認めざるを得ないんだなって感じました。 それまでは国籍という違いによって、日本の代表として日本のものについて我が物顔で紹介したり自慢したりすることができなくて、抵抗があったんです。ニューヨークを経て、ようやく私は日本のカルチャーをすごく知っている人間という自覚ができたので、いまはラーメンとか寿司とか、めちゃくちゃ自分の手柄のように話していますね(笑)。 ―(笑)。ぜひお願いします。エッセイで、移住前は日本のお友達と過ごしているとき、その人にとって自分は数少ない中国籍の知り合いだから、中国に対してのイメージを裏切らないようにしようと心がけていたと書かれています。それはすごくストレスもかかるのではと思ったんですが、自身の振る舞いについて、何か変化はありましたか? チョー:そうですね。以前はずっと気を張ってるところがあったと思うんですけど、そこが割と楽になったかなとは思います。たぶん友達も何かしら感知していると思います。 ずっと何かいい行動をしなきゃいけないとか、私は日本人じゃないからみたいに思っていたところがちょっとほぐれたというか。私は日本で生まれ育って、カルチャーのルーツは日本で、親が中国人の人間であるということを自分で受け入れたので、固執していたことから少し解放されたかなとは思います。 ―チョーさんと話していて感じますが、すごく気遣ってくださいますよね。ジェスチャーもまじえながら、この場をたくさん盛り上げてくださって……。 チョー:それは、私が気を気を遣うのが下手なあまり、人の地雷をたくさん踏んできたので、気を遣うことを意識しているからです(笑)。