なぜ渋野日向子はタイで好スタートを切れたのか…「今の調子としては凄く上出来なゴルフができた」
ショートホールを除いた14ホールのうち、ティショットは12ホールでフェアウェイをキープした。確率が85.7%に達した一方で平均飛距離は242ヤードと、同じ組で回った2019年のKPMG全米女子プロ選手権覇者で、初日を6アンダーの5位タイで発進したハナ・グリーン(24・オーストラリア)の265ヤードの後塵を拝し続けた。 上位陣を見わたせば、メジャー覇者として母国へ凱旋したタバタナキットが284ヤードをマーク。渋野がセンセーショナルなメジャー優勝を果たした2019年のAIG全英女子オープンで、ローアマに輝いたティティクルも275ヤードを飛ばしている。 もっとも、飛距離を競い合うのではなく、ショットの正確性と再現性を重視した渋野は、アマチュア時代から師事してきた青木翔氏との専属コーチ契約を昨年末に解消。その上で試行錯誤を積み重ねながら、コーチなしでスイング改造に取り組んできた。 4試合を戦った国内ツアーはトップ10入りがなく、ANAインスピレーションでは予選落ちした。スイング改造は一朝一夕に結果が出るわけではない。それでも、渋野自身が「なかなか手に負えない感じでした」と不甲斐なさを募らせた前週のHSBC女子チャンピオンズでは、最終日のフェアウェイキープ率が14分の13、92.9%をマークしていた。 少しずつながらも成果を感じ始めていたティショットとは対照的に、トータルで6718ヤードとやや距離があったシンガポールのセントーサGCを舞台にした戦いで、4日間を通して61.1%にとどまったパーオン率がスコアメークにつながらなかった。 一転して今回の舞台は6576ヤードと、渋野をして「めちゃくちゃ長いわけではない」と言わしめるなど、飛距離のハンデをショットの正確性で補える戦いとなる。出だしの1番(パー5、512ヤード)でいきなりボギーを叩くも、2番(パー4、377ヤード)でバーディを奪う、いわゆる「バウンスバック」で嫌な流れを何とか食い止めた。 そこへ5番のサードショットでつかんだ、アプローチ面での手応えが加わる。今シーズンからクラブセッティングを変え、ピッチングを外した上でロフト角の異なる4本のウェッジをスタンバイさせた。風などの自然条件を含めたピンまでの距離やライに応じて、軌道の高低や打球の強弱などを打ち分ける術が、ようやく結果に反映され始めた。