「生ドーナツの行列」を嘲笑う人が知らない“真実” むしろ行列は「そこに滞在できる権利」になっている
街を歩くと至る場所に行列を見かける。メディアやSNSで話題が広がり爆発的な人気となり、行列とわかっていてもわざわざ訪れる人が絶えない店があるのだ。 【画像で見る】中目黒や表参道にある「大行列ドーナツ店」の様子 近年の事例ならハンバーグ店の「挽肉と米」や生ドーナツ店「I’m donut ? (アイムドーナツ)」、ホリエモンとの協業でも話題となった牛タン定食の「牛たんの檸檬」など……。外食ライターとして活動する筆者も、トレンドを体感するため様々な飲食店の行列に並んできた。
■行列の多くは若者が形成している そこで気づくのは、流行の店に並んでいる多くは10代や20代、いわゆる“Z世代”の若者だ。酷暑だろうが立ちっぱなしだろうが1~2時間、平気で並んで外食や買い物を楽しんでいる。 仕事の側面もあって並んでいる筆者と違い、プライベートで好き好んで行列に並ぶ人たちの多さには驚かされるばかりだ。 一方で、Z世代は「コスパ・タイパを重視する世代」とよく言われている。今の若い人は、かけたコスト、タイムに対するパフォーマンスを最大化したいという価値観を持っている。というよりも、Z世代に限らず、その上の世代でもこうしたコスパ、タイパ重視の傾向は浸透しつつある。
この「行列に並ぶ」という行為は、目的のために超時間、行列で過ごさなければならない。時間を大事にする現代人が何時間も行列に費やすのは、コスパ・タイパの悪い行為ではないだろうか? という疑問を感じていた。 しかし、当事者に取材をしていくと、異なる背景が浮かびあがってきた。 ■行列に並ぶことは優れた「体験消費」だった! コスパ・タイパを重視するはずの現代人が行列に並ぶという、一見すると矛盾する行為をする理由は大きく2つあると考える。
まず1つ目は容易に思いつく理由ではあるが、「行列に並ぶ」というその体験自体に価値を見出しているということだろう。 単にハンバーグの写真をSNSにアップするのではなく、「1時間並んだ末に食べたハンバーグ」をアップする方が見る人の興味を引くし、ただの生ドーナツよりも「1時間並んで購入した生ドーナツ」の方が、プレゼントされると嬉しい。単なるモノ消費ではなくコト消費としての価値を行列に見出しているのだ。