「生ドーナツの行列」を嘲笑う人が知らない“真実” むしろ行列は「そこに滞在できる権利」になっている
またTableCheck社からは「TableCheck FastPass」なるサービスも登場。いわゆるディズニーランドでおなじみのファストパスに近いもので、余分に手数料を支払うことによって行列を抜き、待ち時間なく食事が楽しめるというサービスだ。 「お金よりも時間が大事な人」にとっては有難いサービスとなり、飲食店にとってもプラスの収益を上げられるのがメリットだ。 ただ、「ヨコクラストアハウス」では連日行列ができているにもかかわらず、こうしたツールは導入しておらず、現状の行列の解消を特段の急務とは考えていないように見える。
もちろん、スピーディーで無駄のない調理や丁寧な接客から、お客に極力ストレスを与えないようにしている店の配慮は最大限に伝わってきた。 「ヨコクラストアハウス」は目立つような看板を掲げていないためか、行ったことのない近所の人からは店名を認知されていないことも多いようだ。ただ、「行列のラーメン屋」と言えば「ああ、あの店ね」とほとんどの人が理解する。もはや行列は同店のアイデンティティとなっている。 ただ、行列に並ぶ理由はこの体験価値を得るだけではないと筆者は考えている。最近の都心の人出はすさまじい。特に休日、渋谷のような都心部に行くと街は人であふれ、休憩しようにもカフェはどこも混雑。「ちょっと一休み」すらままならない、いわゆる「都心のカフェ激混み問題」がある。
アフターコロナ以降、リベンジ消費に燃える人々に加えインバウンドを含め街中は多くの人であふれかえっている。都市ジャーナリスト・チェーンストア研究家の谷頭和希氏の記事「東京に『座るにも金が要る街』が増えた本質理由」では、年々、街に無料で座れるベンチや滞在スペースが減ってきていることがカフェの混雑に拍車をかけていると指摘されており、街に「無料で滞在することが許される場所」がなくなってきているという。 ■行列に並ぶことは、カフェを探さないでいい免罪符になる