「生ドーナツの行列」を嘲笑う人が知らない“真実” むしろ行列は「そこに滞在できる権利」になっている
筆者が最近並んだ行列の中でもっとも印象深かったのが、栃木県小山市にあるラーメン店「ヨコクラストアハウス」。同店は昆布水つけ麺がウリで、数々のラーメンメディアに取り上げられ、ラーメン評論家やインフルエンサーからの評価も高い名店だ。 最寄り駅は小山駅だが、店まではそこから約4.8km。歩いていくのは大変な距離なのでバス(1時間に1本ほど)やタクシーで向かう人が多く、地元の人以外はおいそれと行ける立地ではない。にもかかわらず全国のラーメンファンが詰めかけ、1~2時間は行列に並ぶ超人気店となっている。
(ちなみにこのエリアは筆者の地元であり、周辺には工業団地と住宅、そして田んぼしかないことはよく知っていたので、行列ができ始めた頃は「こんな場所に、全国からこんなに多くの人がわざわざ訪れるなんて!」と、驚いたものだった) 筆者は今年のお盆に実家に帰省した際、夜6時ごろ同店を訪店。地元の友人と一緒にまずは店の外の行列に入り、1時間ほどで店内のベンチで待つよう案内をされる。そこから数十分待ち、席に着いてラーメンが提供された。
結果、トータルの待ち時間は1時間半ほどだったが、不思議と並び疲れることはなかった。むしろ、積もる話もできたし、近辺にはカフェもない土地なので、「この行列がなければ、ゆっくり話せなかったな」とすら感じた。 筆者たち以外の人たちも、おおよその人がワクワクした様子で、並ぶ時間すらも楽しんでいるようだった。他のお客にはラーメンのイラストが印刷されたお揃いのTシャツを着た団体がおり、おそらくラーメン好きのコミュニティが「遠征」にやってきたような雰囲気で、並々ならぬ熱意や気合を感じた。
■行列解消サービスも登場しているが… 他方では、世の中には行列解消のためのサービスが次々とリリースされている。 例えばリクルート社の「Airウェイト」は、行列の待ち時間がオンライン上で確認できるサービス。順番が回ってくると通知が来るシステムで、行列でその場に張り付いている必要がない。静岡県内で展開するハンバーグ店「さわやか」もこれを利用しており、サービス上では全店舗の待ち時間が確認できる。 一番人気の「さわやか 御殿場プレミアム・アウトレット店」の待ち時間は6時間にも及ぶことがあり、めまいがするほど。しかしこのサービスのおかげで利用者は待っている間にアウトレットパーク内で買い物をするなど、時間を有効利用することができる。まさに「タイパ抜群」のサービスだ。