「銀河系の見方を永久に変える」史上最も詳細な赤外線地図、13年がかりで作成
赤外線で見た天の川銀河(銀河系)の、これまでで最も詳細な地図を、チリのアンドレス・ベーリョ国立大学などの研究チームが公開した。プロジェクトを率いた同大の天体物理学者ダンテ・ミンニーティは「今回の研究は、銀河系の見方を永久に変えてしまった」と指摘する。「非常にたくさんの発見があった」 【画像ギャラリー】赤外線で見た銀河系 天文学誌Astronomy & Astrophysicsで発表されたこの最新地図は、満月8600個分に相当する空の領域をカバーし、20万枚の個別の画像で構成される。チリのアタカマ砂漠で欧州南天天文台(ESO)が運用するパラナル天文台に設置された口径4mのサーベイ望遠鏡VISTAを用いて、2010年~2023年に合計観測夜数420夜にわたって収集された500テラバイトの観測データに基づくものだ。 ■赤外線で見た銀河系 今回の最新地図は、同じチームがやはりVISTAを用いて2012年に作成・公開した前回の銀河系地図に比べて、掲載天体数が約10倍の15億以上となっている。 赤外線による観測が現代天文学において不可欠である理由は、赤外線以外では見落とされてしまう低温の天体からの光を捉えることが可能になるからだ。例えば「恒星になれなかった天体」の褐色矮星や、恒星を公転していない自由浮遊惑星などで、どちらの天体も赤外線波長で輝いている。また、VISTAに搭載された赤外線カメラは、可視光望遠鏡の視界を遮る塵(固体微粒子)を透過することができる。 ■記念碑的な取り組み 論文の筆頭執筆者で、ブラジル・サンタカタリーナ連邦大学の天体物理学者のロベルト・サイトウは「このプロジェクトは、すばらしいチームによって周りを固められたからこそ実現した記念碑的な取り組みだ」と述べている。 今回の最新地図には、VISTA望遠鏡を用いた夜空のサーベイ(掃天)観測であるVVV(VISTA Variables in the Via Lactea)とその拡張プロジェクトのVVVX(eXtended VVV)の一環として収集されたデータが含まれている。VVVとVVVXは、すでに300本以上の科学論文につながっている。 ■ウェッブ望遠鏡の発見 VISTA望遠鏡は本質的に、同じく赤外線の感度が高いジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)の地上バージョンだ。今年7月、JWSTは連星系を構成する2つの褐色矮星を観測した。この2つは、木星の30~35倍の質量を持つ小型の星で、太陽系の最も近くに位置する褐色矮星だ。 褐色矮星は、巨大惑星と小型の恒星の中間的な特徴を持つ天体だ。恒星のように核融合を維持することができないため、比較的速やかに冷えて暗くなるという理由から、恒星になれなかった天体と見なされることが多い。
Jamie Carter