土砂災害から生命を守る、平時にこそハザードマップの確認を #災害に備える
2018年7月、西日本を中心に甚大な被害をもたらした西日本豪雨。気象庁が「平成30年7月豪雨」と命名したこの記録的豪雨では、西日本を中心に平成最悪の被害が発生したが、中でも多くの人命を奪ったのが土砂災害だ。その後も毎年数多く発生して一瞬のうちに生命や財産を奪っている土砂災害から身を守るためには、どうすればよいのだろうか。
2018年の土砂災害発生件数は3500件近く
傾斜が急な山が多く、台風や大雨、地震に見舞われることが多い日本は、そもそも土砂災害が発生しやすい環境にある。国土交通省によると、2021年の土砂災害の発生件数は42都道府県で972件。長崎大水害があった1982年~2020年の平均発生件数1110件は下回ったものの、8月には前線による大雨などにより33都府県で448件の土砂災害が発生し、直近10年の8月の平均発生件数(177件)を大きく上回った。 土砂災害にはがけ崩れ、土石流、地すべりの3種類がある。2021年に静岡県熱海市伊豆山地区の逢初川で発生したのが土石流だ。山腹や川底の石や土砂が、長雨や集中豪雨などによって一気に下流へと押し流され、一瞬のうちに人家や畑などを壊滅させる。熱海市のケースでは、崩落の起点となった土地の盛り土が流れてきた。その流れの速さは規模によって異なるが、時速20~40キロという速度で、気付いてから逃げても間に合わない。 ちなみに西日本豪雨があった2018年の土砂災害発生件数は、1982年の集計開始以来最多となる44道府県で3459件。そして、3種類の土砂災害の中で最も発生が多かったのががけ崩れの2343件だ。がけ崩れは、がけにひび割れができたり、小石がパラパラと落ちてくるなどの前兆現象が現れることはあるが、崩れ落ちるまでの時間が短いため、気付いた時には遅いことも少なくない。
土砂災害のおそれがある地区かどうかを確認
このような恐ろしい土砂災害から身を守るために、まず何よりも重要なことは、住んでいる場所や働いている場所などが土砂災害のおそれがある地区かどうかを確認することだ。土砂災害のおそれがある場所は、土砂災害警戒区域や土砂災害危険箇所とされており、国土交通省のホームページなどから調べることができる。 もし、こうした区域に該当する場合は、長雨や集中豪雨、または地震などが発生すると土砂災害に見舞われる可能性がある。 このような区域では、国や都道府県などが流れる土砂を食い止める砂防ダムを設置するなどの対策を進めているので安心ではないか、と思うかもしれない。しかし、土砂災害発生のおそれがある区域は日本全国で推計約68万区域(2021年12月31日時点)。全ての危険箇所に対して短期間に整備を完了することは不可能だ。 また、既に対策工事が行われていても、想定を超えるような現象が起こった場合は防ぎきれないということを肝に銘じておく必要がある。自宅が土砂災害警戒区域などになっていなくても、普段の生活に使う道路などの近くにがけや小さな沢などがある場合は注意が必要だ。 自宅などが土砂災害警戒区域などに該当していることが分かったら、身を守るために取れる行動は一つしかない。それは、発生前に安全な場所に避難することだ。 そのためには、事前に避難場所を知っておかなければならない。避難場所といっても、土砂災害、洪水、津波など災害の種類によって、避難場所が異なる場合がある。