豪雨災害はどのぐらいの大雨が降ると発生するのか? ポイントは「既往最大値との比較」
大規模な土砂災害や河川の氾濫など、人の命を奪う豪雨災害。気象庁は来週にかけて毎年のように豪雨災害が発生している「梅雨末期」のような気象状況で「いつどこで災害級の大雨となってもおかしくない状態」と警戒を呼びかけているが、いったいどのぐらいの大雨が降ると豪雨災害が発生してしまうのだろうか。 大雨・洪水警報の危険度分布の愛称「キキクル」に 気象庁 気象庁は大雨の見通しを伝える方法として、〇日△時までの24時間に予想される雨量は、多い所で◇地方×ミリなどという表現を用いる。例えば、12日早朝に発表した情報では、13日(午前)6時までの24時間に予想される雨量は▽九州北部地方300ミリ▽九州南部250ミリ▽四国地方200ミリ▽近畿地方180ミリ▽中国地方、東海地方120ミリ▽関東甲信地方、東北地方100ミリーーといった形だ。 また、実際に降った雨について、積算降水量が多い地点を上から順に並べたり、日本地図上に降水量ごとに色分けして表示して、各地の大雨の様子を示している。 しかし、実際には、豪雨災害は単純に雨量が多いところから順に発生するわけではない。普段から雨の降りやすいところ、降りにくいところがあり、地域によって災害をもたらす雨量の規模が異なっているためだ。 そこで注目したいのが、「既往最大値との比較」だ。 既往最大値とは、「過去にその地域で観測された雨量の最大値」のこと。この最大値と比較して、現在(あるいは「これから」)どのぐらい降る(あるいは「降る予想」なの)か、が一つのポイントとなる。 例えば、A地点で過去に観測された72時間雨量の最大値が300ミリで、72時間前から今までの累積雨量が200ミリだとすると、既往最大比は約67%。これに対し、B地点の過去の72時間雨量の最大値が150ミリで、累積雨量がA地点と同じ200ミリだとすると、既往最大比は約133%ということになる。 日本気象協会の本間基寛さんと静岡大学防災総合センターの牛山素行教授が共同で、平成30年7月豪雨(西日本豪雨)の時の降水量と犠牲者の発生の関係について調査・研究したところ、犠牲者が発生した地点のほとんどが既往最大比で100%以上となっていて、150%前後から犠牲者の発生が急増したことが明らかになったという。 こうした結果から考えると、同じ200ミリであってもA地点よりB地点のほうが、災害発生の危険度はより高いと考えられる、といえるだろう。 つまり、単純な雨量ではなく「その地域の過去の最大雨量と比べて、現在降っている(あるいはこれから降ると予想されている)雨量がどれくらい多いか」が、災害発生の危険度が深く関係していると考えられる。 ただ、過去に降った雨の最大値が飛びぬけて多い場合など、既往最大比を下回っていても災害が発生したケースはあるため、「100%を超えていないから安心ではない」ことは忘れないようにしたい。