「努力の仕組み化」に挑戦 楽器の反復練習は毎日続けられたのか?
複数の「仕組み」で自分を努力に向かわせる
そこで今回は、そんな意志の弱さに対抗すべく、『努力は仕組み化できる』から、次の仕組み化を取り入れることにしました。 ①コミットメント 著者の山根さん、そして同僚に、「私はこの本の発売に合わせて、自分が努力してみたことについての記事を載せる」と何度も宣言しました。結果的に、「努力を始めよう!」と思っていた時期からは1カ月ほど遅れてのスタートにはなりましたが、本記事を書くまでに1カ月以上の「努力期間」を設けることができました。 ②仲間づくりと証拠 ①で、努力することを宣言していたにもかかわらず「始める」ことができなかったので、一緒に努力してくれる仲間を募りました(「日記を毎日欠かさずつけたい!」編参照)。そして、「一緒にやっている感じ」を強めるために、「1カ月チャレンジ」と名前を付けたチャットグループを作成し、努力の「証拠写真」をアップしていくことにしました。
努力は仕組み化できたのか?
結果は次のようになりました。 40日の期間中、 ・努力できたのが23日 ・楽譜を見るなど、設定した努力に準じることができたのが4日 ・努力できなかったのが13日 努力率(努力できた日の割合)は57.5%でした。この実験を始める前の努力率が12.5%(40日中5日)であったことを踏まえると改善したものの、「1カ月間、毎日練習する」という目標は果たせなかったことになります。 なお、できなかった13日の理由の内訳は、 ・人との約束(飲み会や会食、外出など) 8日 ・忘れた 2日 ・その他(残業、疲れなど) 3日 でした。 この実験について著者の山根さんは、次のように述べています。 努力率100%を目標にしていた宮本さんは不完全燃焼のようですが、コミットメントと仲間づくりで、12.5%だった努力率が57.5%になったというのは、ものすごい増加です。 宮本さんのように「努力できなかったとき」の状況を記録しておくと、自分にとっての「努力を妨げるもの」が浮き彫りになり、解決しやすいんだなと思いました。簡単にできますし、効果的だと思います。 『努力は仕組み化できる』のp.211-214では、人と一緒にいるときや疲れているときに努力をやめてしまいがちであるという研究を紹介しましたが、そこで示されていた通りの結果になっていたようですね。 書籍でも紹介したように、そのような状況で努力を続けるには、かなり強い意志を必要とします。意志力によっぽどの自信がなければ、他人の影響を受けそうな状況や、疲れているときに「努力」しようとするのは避けたほうがいいでしょう。 この研究では、既に努力の習慣ができている人は「疲れ」や「周囲の人」を努力の妨げとは感じていないことも明らかにされています。努力が習慣になるまでは、意志をぐらつかせる危険な状況からは離れておくほうがよいでしょう。 また、「なかなか始めることができなかった」のも興味深いです。p.207-208「夏休み最終日に宿題で泣く人の心理」でも紹介したように、「楽観的な人ほど面白くなさそうな課題を先延ばしにする」ことが実験で明らかになっていますので、宮本さんもこのタイプなのでしょうか? 山根さんのご指摘の通り、「やろう!」と決め、コミットメントしたものの、それだけでは動き出すことができませんでした。自分で認識している以上に、意志の力が弱く、また楽観視しがちである、ということを自覚したほうがよさそうです。 また、意志の力が弱く楽観視しがちな場合には、「努力の仕組み」を幾つか組み合わせることが有効である、ともいえそうです。ぜひ皆さんも、この“発見”を役立てていただけたらと思います。