沈みゆく島の人たちは「先進国を“許している”」。PwCから一転、バリ島のホテルから気候変動に声を上げる日本人
バリ島の高地にある観光地、ウブドに位置するエシカルホテル「マナ・アースリー・パラダイス」。 【全画像をみる】沈みゆく島の人たちは「先進国を“許している”」。PwCから一転、バリ島のホテルから気候変動に声を上げる日本人 南国の植物が生い茂るそのホテルは、施設のすべての照明が太陽光発電で賄われ、雨水を循環し使用する。その徹底ぶりは、2022年には国際的なエシカルの指標であるBコープ認証を受けたほど。併設するレストランでは、現地の在来種の種を自然農法で育てた食材を使用した料理を提供する。
アジア太平洋地域の支援を実施
風光明媚な「マナ・アースリー・パラダイス」を運営するのは「アース・カンパニー」の最高経営責任者、濱川明日香(はまかわ・あすか)だ。アース・カンパニーはインドネシアのバリ島と日本を拠点とする二団体の総称。インドネシアで運営するホテルの他、日本では非営利団体としてアジア太平洋地域の社会起業家支援と人材育成プログラムを提供し、人と社会が共繁栄する未来の創造を目指している。 ボストン大学で4年間を過ごし、外資系コンサル・PwC出身。バリ島に住み、4人の子を持つ母。濱川の経歴を聞くと、パワフルなイメージを抱く。だが、今からは想像もつかないような幼少期を送っていた。
自力で勝ち取ったアメリカ留学
1982年に世田谷で生まれた濱川。モンテッソーリ教育の幼稚園に通い、自立心が強く、歌や踊りが好きな陽気な子どもだった。しかしそれは、私立の一貫校に進学した小学校時代に一変する。いじめられていた友人をかばったところ濱川もいじめのターゲットに。上履きに画びょうを入れられたり、時には机に花が飾られていたりと陰湿ないじめを受け、2年もの間、登校ができなくなった。心身が弱り果てて足が動かなくなり、車いすで生活をしていた時期もあったという。 濱川が国際協力に目覚めたのは、中学生のころだ。近所の子どもにピアノを教えて稼いだお小遣いを、母の勧めでユニセフに寄付したところ、毎月会報が送られてきた。 「私はADHDで難読症なのですが、発展途上国の実情をつづった会報はなぜかスムーズに読むことができました」 生まれた場所が異なるだけで、環境に恵まれない人がいる。 その現状に心を痛めた濱川は、国連で国際協力に携わる夢ができた。そう決まれば、いち早く国連の本部があるアメリカに行きたい。時を同じくして、濱川は映画『天使にラブソングを』を見て、R&Bなどのアメリカの音楽にも夢中になっていた。同調圧力にとらわれる日本の風潮にも、心底うんざりしていた濱川。アメリカの自由な学生生活やカルチャーへの憧れが、アメリカへの思いをますます強くしていた。 しかし当時の家計から留学費を捻出することは難しかった。留学に反対する父には内緒で奨学金を得て、ついに高校時代にアメリカへ1年間の交換留学を果たした。