Pace東京がプレビューを開催。CEOマーク・グリムシャーに聞く、東京・麻布台の新スペースやチームラボへの評価、日本のアート市場活性化のための鍵とは
日本のアート市場の強みと課題
──日本国内では、香港はもちろんFriezeなど巨大フェアが開催されるソウルにもすでに遅れを取っているという焦りもありますが、日本のアート市場の強みと課題をどうお考えですか。 日本はテキサス州マーファのようなメッカになってきていると感じています。ソウルや香港に毎年アート界の関係者が集まるのですが、誰もが日本に行きたいと耳にするようになりました。マイアミもアートマーケットの影響を受けて世界的に有名になりましたが、東京は世界最大の都市であり、世界一のグルメ都市やデザイン都市でもあり、世界でももっとも素晴らしい場所のひとつです。ならば、なぜここに国際的なアートシーンがないのか。1980年代から90年代にかけて、日本のコレクターは大きな存在感を占めていました。私から見ても日本国内のコレクターの数は増えており、積極的に収集をしています。私たち以外のメガギャラリーも進出すると思います。東京は世界中のアート界の誰もが訪れる場所になると信じています。私の同業者たちも数年後は日本を再発見するのになぜこんなに時間がかかったのかと不思議に思うはずです。 ──日本のアート市場が国際的に活性化しない理由のひとつに税制上の理由があると思います。日本政府は2020年12月と21年1月に美術品を対象とした関税法基本通達改正を行い、Tokyo Gendaiのように保税資格を取得した大型アートフェアも誕生していますが、まだ改善の余地は大きいかと思います。日本の税制度についてのお考えや提言があればお教えください。 アートの輸入時に関税がかかるという法律があり、10%という税率は高い。そもそもアートは人々が鑑賞し暮らしを豊かにするものなので、個人的には税金がかかるのはおかしいと思います。実際、税金がかからない国もあります。近年、韓国では数多くの取引が行われ、アートビジネスによって莫大な利益が生み出されています。こうした好況を生み出すために、税制を優遇し所得税・贈与税がかかりにくくなっていますし、それがむしろ国内経済にもプラスに働いています。こうした韓国のあり方は見本になるでしょう。 税収を考えた場合、アートビジネスを阻害することがプラスなのか。それともアートビジネスを奨励したほうがプラスなのか。韓国の事例もありますし、国としてアートビジネスを積極的に奨励した方ほうが税収を増やせるのではないでしょうか。
福島夏子(編集部)