Pace東京がプレビューを開催。CEOマーク・グリムシャーに聞く、東京・麻布台の新スペースやチームラボへの評価、日本のアート市場活性化のための鍵とは
チームラボは美術史に大きく貢献している
──Paceギャラリーに所属しているチームラボは、先んじて麻布台ヒルズに大きなミュージアム「チームラボボーダレス」を誕生させ、国内外から訪れる人の重要な観光スポットにもなっています。ただ日本国内のアートシーンでは、いわゆる現代アートの文脈から少し離れた、エンターテイメント要素の強い存在だと見られる傾向にあります。こうしたギャップはアメリカやヨーロッパではどうとらえられていますか。またあなたはチームラボのどんなところに魅力と可能性を感じますか。 とてもいい質問です。Paceギャラリーは10年以上にわたって彼らの作品を扱ってきました。チームラボがアートではないと言っている人がいることは理解しています。私は子供の頃、毎年家族でジャン・デュビュッフェのアトリエを訪れていたのですが、両親は彼について同じことを言っていました。「面白いけど、アートではない」と。実際、デュビュッフェの最初の展覧会に大勢のアーティストが来場し、展覧会が気に入らなくて帰っていた人も少なくなかったと聞いています。しかし、デュビュッフェが私に「アートではないと言われたら、それに注目しなさい」と言ってくれました。いまでも彼の教えをしっかりと守っています。 チームラボは美術史に大きく貢献していると思います。何がアートで、何がエンターテインメントなのか。映画はアートなのか、それともエンターテイメントなのか。音楽はアートなのか、などの問いに答えるのは難しいですし、チームラボがアートなのか議論を呼ぶこと自体がアーティストの行為そのものなのではないでしょうか。 アートを定義しようとしたふたりのアーティストがいます。アド・ラインハートが「アートはアートであり、それ以外のものはそれ以外のものである」と言っています。いっぽうで、ロバート・アーウィンが「見ればわかる」と言い残しています。彼らの定義と私の個人的な経験から、チームラボは間違いなくアートを作品を制作していると思います。しかし、伝統的なアート界は一般の人が楽しむことができるアート、もしくは理解できるアートを恐れていますし、単純に好きじゃないのです(笑)。でもやはり、それを問うことはいいことだと思います。