記憶の向こう側をくすぐる中毒性のある作品 トレーディングミュージアムで展示中のミナミリョウヘイが語る創造の原点
WWD:ミナミさんが主宰のレーベル「ア ナイスフォーム(A NiCE FORM)」もこれまでDIYで作品を作られてきたことがベースにあるのでしょうか。
ミナミ:そうですね。まだCDしか出してないけど、バイナルもリリースしたいですし。ある意味ジャケありきで音源を作りたいですね。今はサブスクだけでいいというようなレーベルもありますけど、やっぱり印刷物が好きです。そんなきっかけでレーベルをやりだしました。自分のモチベーションに正直にいるだけです。昨年「カーム アンド パンクギャラリー(CALM & PUNK GALLERY、以下、カーム アンド パンク)」の展示でも似たような話になったんですけど、僕にコンセプチュアルなことは一切ないんです。批判するつもりはないですけど、コンセプトに興味がなくて。だから必要もないなと。鑑賞者の記憶をくすぐるような作品を作りたいだけなんです。
WWD:記憶をくすぐるとは?
ミナミ:記憶も触覚のように触るというか。ガラスや布、鉄を触ったりする触覚での質感とは違うけれど、記憶にも“質感“と呼ばざるを得ないものが伴います。それを振り分けてるのが海馬の手前あたりの器官らしいんですね。その質感の異なる個々のクオリアが大切だと思うんです。要するに記憶っていろんな引き出しにしまうじゃないですか。振り分けられる手前で、例えば風景でも“甘い風景“って感じたり、音なのに“黒い音“とか“青い音“とか、いろんな感覚器官が混ざった質感を僕らは記憶で持っているんです。“向こう側“って僕は呼んでるんですけど、そこの記憶をくすぐる時に一番大切なのは雰囲気という概念。雰囲気には日常で常に触れていますが、ノイズとか言葉にしづらい「いいな」という感覚は人ぞれぞれですよね。各々センサーが違うからでしょうけど、雰囲気のちょっと向こう側をくすぐられた感覚にあるんですよね。その“向こう側系“に触れられた時の記憶に新しい質感を覚えてるのだと思います。「何だこれは?」っていう記憶に残る中毒性。