記憶の向こう側をくすぐる中毒性のある作品 トレーディングミュージアムで展示中のミナミリョウヘイが語る創造の原点
WWD:言葉ではなかなか理解しづらい気もしますね。
ミナミ:理解しなくていいと思うんです。記憶の向こう側に触っていることを言語化してしまうと、どんどん劣化してしまいますから。刺身をレンジでチンした感覚というか。要は生モノなんです。初期衝動とか何かをくらった時の感覚はある種、質感のバグだとも思っています。記憶の質感は全員違っていい。今回の作品も、1つの作品をじっくり鑑賞してもいいですし、でもやっぱり全体のインパクトが強いから、その雰囲気の質感にくらってほしいというこだわりはありますね。
WWD:明確なコンセプトがあって理解を深めてくという展示の仕方ではなく、全体でどんどん沼にハマっていく感覚でしょうか。
ミナミ:そういう意味のコンセプトなのかもしれないです。ただ、コンセプチュアルアートと考えたことはないですけど。
「ギャルソン」からの直接オファーで決まったインスタレーション
WWD:ちなみに今回の展示はどうやって決まったんでしょうか。
ミナミ:2020年に岡本太郎賞に入選した作品を「コム デ ギャルソン」の榎本さんが見にこられていて、気にしてくださっていたそうなんです。そこから今回のタイミングでトレーディング ミュージアムの2店舗で展示したいとお声掛けいただきました。
WWD:話を聞いた時はどういう気持ちでしたか?
ミナミ:「ギャルソン」から連絡がきて、すぐに「やります」とお伝えしました。当時は日本の最高位のブランドという認識くらいしかありませんでした。知れば知るほどすごいことだと感じるようになりましたけど、いつも通りにしようとは思ってました。
WWD:「トレーディングミュージアム」を見てどのように作り上げていったんでしょうか?
ミナミ:構想とかはざっくりとしか決めませんでしたね。円柱の中に世界を作ることでしたが、実はエスキースが苦手で。「ジャイル」の店舗はパイプ椅子のコラージュだけの世界で、ミッドタウンはそこから即興的に作り上げていきました。チェーンソーで切って、ボンドを混ぜた絵の具を垂れ流した木彫りの立体彫刻とそこから空間をコラージュしていくように、即興的に仕上がっていきました。結局、質感が全く異なるものがメイクできました。自分が全開という感覚はあります。