記憶の向こう側をくすぐる中毒性のある作品 トレーディングミュージアムで展示中のミナミリョウヘイが語る創造の原点
ミナミ:そうですね。「何か変で、何かヤバいもの」。それこそ、段ボールを適当に合体させた変な立体物を作ってはすぐ壊す。それが自分の中で “作品“っていう感覚がありました。
WWD:そこから活動領域はどのように広がっていったんでしょうか?ミナミさんの活動にとって音楽は切り離せないと思いますが。
ミナミ:そうですね。音楽は根本です。僕が小5の頃、中学生の兄が「ニルヴァーナ(Nirvana)」とか「オアシス(Oasis)」とか、いわゆるMTVジャパンで流れているようなアーティストをよく聴いていたんですけど、そこから急に「エイフェックスツイン(Aphex Twin)」とか「スクエアプッシャー(Squarepusher)」とかを聴き出したんですよ。その影響もあって、「エイフェックスツイン」が好きになりました。その頃にはジャンル関係なく聴いていましたね。
WWD:音楽の話ができる同年代の友達はいたんですか?
ミナミ:誰も話が合わないから、兄が唯一の友達みたいな(笑)。そこから自分でも掘るようになって、ミックステープを作ってました。そのジャケを自分で描いてもいましたね。世には出ていないけど、自分のレーベルが始まっていたという感覚があって、勝手に楽しんでいました。
WWD:架空のレーベルのミックステープが意図して作ったものの原体験。
ミナミ:ある意味、自分だけの商品みたいな感じです。
WWD:ミナミさんにとって、音楽がペインティングやドローイング、インスタレーション、立体などの他の作品にもたらす影響についてはどう考えていますか?
ミナミ:僕にとっては基本的に全部同じ素材です。音も視覚表現も身体表現も。制作の基本はコラージュなので、いろいろな素材をカットアップしていくように全部に影響し合いますから。さっきのミックステープを作る感覚が完全に今と一緒ですね。僕は音も映像も絵画も立体作品も作るのですが、録音してからジャケを作るまでの一連の作業は、本当だったらグラフィックデザイナーやイラストレーターとかが関わりますが、全部自分がやりたいことなんですよ。だから結局、絵を描いてもそこに音楽や映像が欲しくなってきて、誰かに頼むよりも自分で作った方が早いし、理想の質感に出来上がるように「カセットテープのジャケットが欲しいから自分で描く」感覚でジャンルが増えていきました。立体物では、空間に対する要素も欲しくなるから、映像も含めたインスタレーションになっていきました。初めの展覧会は絵画だけだったんです。何か経緯があるのではなくて、そもそも必要な素材は自分で集めてきて、自分で合体させるみたいなことを昔から続けていたので。