「自分のオシッコの臭いを嗅いで驚いて…」スタッフもみんなメロメロになった“かわいすぎる競走馬”の驚きのエピソード
目の輝きがみるみる増し…
ラッキーハンターが午前中のホースセラピーの仕事を終えたと聞いて、私と林さんは厩舎へ移動することにした。通路を進んでいくと、はるか前方で栗毛の馬が「あ!」という感じでこちらに注目した。「あの人は、もしかして、もしかするとぉ……」と、目の輝きがみるみる増しているのが遠目にもわかった。 「ラッキー、元気そうだな!」 林さんが呼びかけると、ラッキーハンターは「やっぱり、そうだー!」と言わんばかりに馬房からグイと顔を突き出し、さらに確認するように林さんの手や体に柔らかな鼻先をピタピタとくっつけた。元競走馬は、現役時代の調教担当者との久しぶりの再会をあきらかに喜んでいた。 「ラッキー、嬉しそう。林さんが本当に好きなんですね」 「そうだったらいいですけど、目当てはコレじゃないかな」 林さんが笑いながらお土産のニンジンを取り出すと、ラッキーハンターは前肢で地面をカシカシと搔く仕草をした。これは“前搔き”といって、要求をあらわすボディランゲージのひとつだ。さすが人気ナンバーワンのおやつだけのことはある。口にするときは3分の1くらいずつ、パリポリと丹念に嚙み砕いていて、大好物の味を丁寧に楽しんでいた。 おやつタイムが終わると、林さんは馬房ギリギリに背を向けて立ち、ラッキーハンターの頭部を自分の右肩に乗せるようにして両腕で優しく抱きしめた。おそらくこの体勢は馬にとって“抱っこ”のようなものなのだろう、ラッキーハンターも至福のときを味わうように静かに力を抜いている。競馬業界では人馬一体という言葉がよく使われるが、それは騎手と競走馬に限定したものではないのかもしれない――美しい光景に、私は静かな感動を覚えた。 レース中に突如ガックリと失速して足がぶらぶらに…「安楽死だけは絶対に避けたい」負傷した愛馬のために馬主がとった“必死の行動” へ続く
片野 ゆか/Webオリジナル(外部転載)
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