「自分のオシッコの臭いを嗅いで驚いて…」スタッフもみんなメロメロになった“かわいすぎる競走馬”の驚きのエピソード
ラッキーがなぜか驚いて飛び上がってしまった
人間の世界には、意図せず面白いことができる人がいるが、どうやらそれは馬の世界にもあり得ることらしい。さらに林さんが教えてくれたのは、砂浴びタイムのエピソードだった。 「ラッキーは砂のうえでゴロゴロするのが大好きで、馬にとってはストレス発散効果があります。トレーニングを頑張っていたので、少しでも気分転換ができればと砂場に連れていってあげたら、そこで驚いて飛び上がってしまったことがあるんです」 「いつも大らかで何にも動じないラッキーがそこまで驚くなんて、何があったんですか?」 私が信じられない思いで訊くと、答えは予想もしないものだった。 「自分のオシッコを嗅いだんです」 「自分のオシッコの臭いに驚くって、どういうことですか?」 「馬はフレーメンといって、尿の臭いを確認して歯を剝くような表情を見せることがありますが……ラッキーのあれはおそらく違うと思います。動画があります」 林さんのスマートフォンに、砂場で仰向けになって四肢を振り回すようにして砂浴びを楽しむラッキーハンターの姿が映し出された。
砂浴び最高~♪ 最高だ~♪ 今日も一日頑張った~♪ ラッキーハンターの様子から、即興の鼻歌が聞こえてきそうだった。馬は骨格上、自分の体の多くの部分を自分で触ることができない。特に背中や腰は、虫に刺されたり汗をかいたりしても気軽に搔くことができない。馬にとってのゴロンゴロンは、おそらく犬や猫よりも遥かに至福のときなのだろう。 動画のラッキーハンターは、やがてスックと立ち上がると放尿をはじめた。体重400キロ以上の大動物の尿はまるで滝のような迫力だが、足元のサラサラの砂がすみやかに吸収していった。 事が終了するとラッキーハンターは、確認するように濡れた砂に静かに鼻を近づけた。その瞬間、馬体が弾かれたように上下した。パニックでも起こしたのかと思ったが、2、3回ジャンプして走りまわると冷静になった。そして自分の尿を大量に吸い込んだポイントに戻り、先程と同じように鼻先をピタリと砂につけると、再びロデオのようにさらに激しくジャンプした。すぐに冷静になったので事故の心配はなかったものの、林さんが「一瞬、焦りました」と言うのも無理はない。 「ラッキーは、どうしちゃったんですか!?」 私が訊くと、林さんは「あくまで推測ですが」と前置きしたうえで、ラッキーハンターの気持ちを代弁してくれた。それによるとシーン1は「くっさー!」で、シーン2は「やっぱり、くっさー!」だ。セリフを当てて再度動画を見たら、笑いが止まらなくなった。自分のオシッコにそこまで驚くなんて、ラッキーハンターの嗅覚はいったいどうなっているのか。だって、すごーく臭かったんだもん! そんなセリフが聞こえてきそうな気がした。 新馬時代のエピソードを知ることで、私はラッキーハンターの魅力に益々惹きつけられた。人間が大好きで穏やかな性格で、かといって優等生的というわけではなく、むしろ人に笑いを届ける才能をたっぷりと兼ね備えている。ラッキーハンターは、人間社会に幸せをもたらしてくれる存在だと思った。
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