高級時計、なぜ好調? ブライトリングCEO「スイートスポットは7200ドル」
■マーケティング、釘を打つように
――カーンさんは2018年からスーパーオーシャン、アベンジャー、クロノマット、プレミエ、ナビタイマーと、全て再ローンチしました。併せて取り組んだキャンペーン「スクワッド」も効果的でしたね。 「新生ブライトリングは業界の売り上げトップ10にランクインするようになりました。とはいえ、ブランド認知はまだまだです。これからもっと認知度を上げることが課題です。一つの施策として、ユニークなキャンペーンである『スクワッド』をもっと深掘りしていきます」 「スクワッドとはスポーツや娯楽など、我が社の各専門領域に携わる達人3人以上からなるチームを指します。これまでにシネマ・スクワッド、オールスター・スクワッド、サーフ・スクワッドなどを立ち上げ、広告キャンペーンを展開してきました。結果的にこの手法が成功のレシピとなりました」 「成功したものは変える必要がありません。『いつもと同じで代わり映えしないじゃないか』と感じているマーケティング手法でも、それにまだ気づいていない人が世の中にはたくさんいるのです。だから変える必要はないのです。まさに釘打ちのように、同じ場所を同じように打ち続けて、どんどん深く食い込ませていく。それが私の実践するマーケティングです」
■勝つための価格戦略、ブランドの「身の丈」意識
――ブライトリングの強みは買いやすい価格帯だと思います。ラグジュアリーブランドの価格引き上げが目立っていますが、価格戦略をどう考えていますか。 「最も意識しているのが時計のスイートスポットと呼んでいる平均7200ドル前後の価格帯です。ブライトリングはどういうブランドなのか、という定義を突き詰めていけば価格はおのずと決まってきます。そこに居続けることが大事です」 「現在ラグジュアリー市場の製品価格は高騰していますが、それがうまくいかない例もあります。3万~4万ドルの車に乗っている人が、もう少しプレステージ性のある車が買いたいと思ったら、別のブランドに行くはずです。それぞれのブランドにはイメージに見合う価格があるので、身の丈を超えた価格で勝とうとするのは間違っています」 「もし付加価値が高いムーブメントや特別な素材を使うのであれば、そのときだけ高額にすればよいのです。アベンジャーのムーブメントをキャリバー01に変えたときは2000ドル値上げしました。そこに本当の価値が反映されているのであれば、お客様には支持していただけます。一方、なんとなく値上げをするようでは世の中に受け入れられません」 ――ブライトリングは独立したブランドだからこそ、そうした対応が素早くできるのではないですか。 「今の時計業界は上位5~6社で売り上げの80%を占めているようなところがあります。巨大ブランドグループだからといって成功するわけではなく、結局は率いているリーダーの手腕が成否を左右します。今の時代はいかに素早く俊敏に動けるかどうかがものを言う。また、独立しているからこそ色々なチャレンジができるという面もあります。スピード感を持って変化に対応できる独立系ブランドであることが成功の一条件であるとするならば、ブライトリングはまさにその典型的な実例だと思います」 聞き手はTHE NIKKEI MAGAZINE 編集長 松本和佳 ※この記事は「THE NIKKEI MAGAZINE」の記事を再構成して配信しています。