AEDがおもちゃに!お医者さんごっこで楽しく学ぶ“救命スキル” 発売1週間で完売「トイこころ」開発者が込めた思いとは
発売からわずか1週間で1000個が完売!
しかし、スワニーとの共同製作が始まってからも坂野さんは壁にぶつかる。初めてのおもちゃ作りゆえ、基板に必要な電圧の数値や鳴らしたい音の大きさを具体的な数字で伝えられなかったのだ。 悩んだ挙句、頼ったのは繋がりがあった中国の企業。話し合いを重ねた後、基板の製作を依頼した。 「製品寸法に基板サイズも合わせないといけないので僕とスワニーさん、中国の会社さんで常に連携し、おもちゃAEDを作り上げていきました」 こうして出来上がった“おもちゃAED”は、我が子に遊んでもらいながら音声や細かい部分の微調節を何度も繰り返し、完成。心臓(=こころ)を守る玩具であることから、『トイこころ』という商品名がつけられた。坂野さんは商品に込めた想いが多くの人に届くよう、プロに手伝ってもらい、プロモーション活動にも力を注いだ。 「今までになかったものなのでしっかり伝えないと遊び方や立ち位置、存在意義が伝わりにくいため、“知ってもらうこと”には力注ぎました」 熱い思いを乗せた「トイこころ」は2024年11月1日、発売開始。1~2カ月くらいで完売したら嬉しい。そう思っていた坂野さんは、予期せぬ状況を目の当たりにする。なんと、発売からわずか1週間ほどで完売となったのだ。 「発売を待ってくれていた方が多かったようで、発売日から安定して多くの方に購入していただけました」 「トイこころ」の魅力はAEDの使用感をリアルに再現しつつも、おもちゃらしさを楽しめるところにある。例えば、本物のAEDは胸骨圧迫をすると「ピピピピ」という音が2分間流れるが、「トイこころ」は10秒間だけ音が流れるそう。 「そうやって端折っている部分はあり、光って振動するという玩具要素はあるけれど、嘘は教えないおもちゃ。我が子やイベントなどでたくさんの子どもたちに触ってもらった時のリアクションなどを参考にしながら子どもが飽きず、達成感を得られるように工夫しました」 流れる音声は怒られている感覚にならないよう、ホップにしたが、話している内容は本物のAEDと似た内容。実際のAEDにある「小学生~大人用」「未就学児用」の切替機能も玩具らしく「おとな」「こども」の表記で再現。 「トイこころ」は、アメリカやドイツに在住する日本人にも購入された。 「もしかしたら自分が知らないだけで世界にはおもちゃのAEDがあるのかもしれないと思っていましたが、そうじゃないのかもと実感できた反響でした」 完売した1000個の「トイこころ」は2024年2月頃、購入者の手元に届くそう。販売と同時に立ち上げた「幼稚園寄贈プロジェクト」などにより、50個ほどの「トイこころ」は全国各地の幼稚園や保育園に寄贈される。