プロ野球開幕決定も球団の経営危機脱出に立ちはだかる野球協約の壁
新型コロナウイルスの影響で延期されていたプロ野球の開幕日が6月19日に決定、明日2日からは関東、関西に分かれて練習試合がスタートするが、まだ解決すべき問題が残っている。当面は無観客開催。早ければ7月10日から観客を入れていく予定だが、感染リスクを減らすため入場人数に制限がかけられる方針で、今季は各球団ともに大幅な減収となることが予想される。球団経営に打撃を与えることは、必至の状況で、経営者サイドは、支出部門の大半を占める選手年俸の削減案に切り込みたいのだが、公式にはまだ選手会に対して年俸の削減案を持ち掛けていない。メジャーリーグと違い、日本の野球協約、統一契約書には、新型コロナウイルス禍のような不測の事態があった場合、一度サインした参稼報酬の金額を減額できる条項がないのが理由だ。選手は、個人事業主で野球協約と統一契約書を盾にすれば、削減案を呑む必要はない。開幕までには、12球団サイドと選手会の間で労使交渉が行われると見られているが、プロ野球界は、自ら作った”野球協約の壁”をどう乗り越え新型コロナ危機を脱出するのか。
新型コロナ禍で球団経営は危機的状況
先日、楽天の三木谷オーナーが返したわずか数文字のツイートが話題になった。 5月23日。某野球ファンと思しき人の「オーナーはこの2ヶ月の給与とこれから無観客での試合が行われるために収入が激減しますが、選手に給与を払い続けるんですか?? MLBみたいに、交渉するべきです。 選手だけ痛みなく、高額所得を得るのは違うと思います」という”つぶやき”に対して、こう返したのだ。 「ま、それが普通の感覚だとは思いますよ」 ぼやきや怒りにも聞こえるツイートである。 実は、ここまで12球団は、開幕に向けて、あらゆる協議を続けてきたが、新型コロナの感染予防対策や開幕スケジュールが最優先にされ、選手の年俸削減についての議論は後回しになってきた。 7月4日(日本時間5日)の開幕を目指しているメジャーリーグでは、3月の段階で、少なくなる試合数に年俸を比例させて削減することをメジャー機構側と選手会が合意した。5月に入って機構側が、今度は、今季の収益の折半案を出してきたことで選手会が抵抗、合意に至っていないが、日本では、まだNPBと選手会の年俸を巡っての交渉は公式には行われていない。 メジャー同様、日本の12球団にとって経営問題は深刻で 5月12日に開催された臨時のオーナー会議後の会見で、座長の横浜DeNA南場オーナーは「プロ野球はかつてない危機的ともいえる状況です。球団経営にとって非常に大きな問題。減収のインパクトは大きい」と悲痛な訴えを口にしていた。 143試合が120試合に減り、交流戦、オールスターもなくなり、当面は、無観客開催。7月10日以降に客入れが始まっても上限5000人という案があり、観客動員が減ることは間違いない。日本のプロ野球は、放映権料、スポンサー収入よりも、チケット収入、球場での飲食などに重きを置いたビジネススタイルのため大減収を被ることが予想されている。 経営状況を改善するためには支出を減らすことが重要になるが、その支出の大部分を占めるのが、選手の年俸、人件費である。南場オーナーは、臨時オーナー会議で、その選手の年俸削減問題が、「話題には上がった」と認めたが、具体的な動きにはつながっていない。 なぜか。