プロ野球開幕決定も球団の経営危機脱出に立ちはだかる野球協約の壁
実は、メジャーリーグの野球協約には、今回の新型コロナ禍のような不測の事態に備えた一文があるのだが、日本の野球協約、統一契約書には、それがない。つまりルール上、選手は、試合数が減ろうが、無観客試合になろうが年俸を下げられることはない。球団は、全選手に統一契約書にサインした通りの年俸を支払わねばならないことになっているのだ。 さらに野球協約の第88条には 「球団は選手に対し参稼報酬の支払いに代えて、試合収入金の歩合、又は請負による支払いあるいはこれに類する支払いを約定してはならない」とあり、メジャー機構が、選手会に提案しているような、チームの収益に応じて年俸を払うような方式を禁じている。 三木谷オーナーの言う「普通の感覚」は、あくまでも経営者側から見た「普通の感覚」ではあり、その発言に賛否はあるだろう。しかし、巨人、阪神、広島ら、これまで剰余金を貯めこんでいる球団がある一方で、親会社から広告宣伝費の名のもと巨額の補填を受けている球団や、やっと単独で採算の収支を黒字に乗せたばかりの球団も少なくなく、いつ経営危機に追い込まれる事態が起きても不思議ではない。おまけに新型コロナ禍で、親会社が大打撃を受けている球団もあり、下手をすれば、身売り話が出てくる危険性もある。野球界が、わずか12球団と所属選手で成り立っている、共存共栄の狭い世界であることを考えれば、痛みを分かち合う必要はあるのかもしれない。 某チームの主力選手に意見を求めたが、「僕らは球団に雇われ給料をもらっている立場です。無観客で、お客さんを入れられないのであれば、大きなマイナスで、球団経営が、きついこともわかります。野球界だけでなく、日本中の経済が厳しい状況になっています。痛みを分かちあう必要はあるし、球団側の話を聞いて、みないといけないなとは思っています。どうするかは、話をしてからでしょうが」と、複雑な心境を明らかにしていた。