ヒートアイランド現象から学ぶ、酷暑をサバイブする知恵
わかりやすいのは「アスファルト」です。アスファルトは太陽の熱を日中に吸収して、夜になると排熱します。そのためアスファルトの敷地面積が多ければ、芝生や土の地面に比べて夜も暑くなり、昼夜問わず全体的に気温は上がります。土地を覆う素材が、ヒートアイランド現象を起こす原因の一つと言えるわけです。 あとは車です。今は燃費のいい自動車がほとんどですが、車が使ったエネルギーは最後に、すべて「熱」になります。例えばブレーキを踏むと、タイヤと道路の間に摩擦熱が発生します。また、排気や車体からも熱が発生している。だから、たくさん車が走っていること自体が、ヒートアイランド現象を誘発しているんですね。 また、エアコンも分かりやすい例の一つです。マンションや住宅のベランダには室外機がついていますよね。その前を通ると、ムワッと暖かい空気が排出されているのが分かります。住宅用のエアコンは、一般的には「空冷式」のものが多いです。この場合、エアコンにおける熱交換過程の結果、室内の空気から冷媒(フロンガスなど)へと奪われた熱が、室外機において空気に戻される、つまり、熱気として放出されているんです。 一方、高層ビルだと水冷式の空調設備を備えているため状況が違います。水冷式の場合、建物内部の熱を蒸気として外部に捨てているため、高層ビルでは、都市に対する加湿器のような働きをしているイメージです。直接、排熱しているわけではないけれど、湿度には影響しているので、汗が乾きにくいとか、ジメジメするという印象が強まると思います。
── なるほど。ヒートアイランド現象において、地球温暖化はどのように関係しているんでしょうか? 地球温暖化とヒートアイランド現象は、まったく無関係ではないけれど、メカニズムは違います。お互いがお互いの原因になっているという認識ですね。 例えば夏のビルの空調は、先ほど説明したように熱を蒸気に変換させています。住宅にある空冷式のエアコン室外機のように熱気を放出していないため、建物周辺の気温は上昇しません。 一方、アパートやマンションの空調は、室内の気温を一定にキープするため、外部から室内へ侵入する熱をそのまま外へ汲み出しています。つまり排出している熱量は、エアコンを稼働させる電気エネルギー由来のもの。室外機の前を通りかかって、生暖かい風を浴びると「これがヒートアイランド現象を引き起こしているのか」という気持ちになりますよね。ただし、室外機から出る熱気自体が気温を上昇させているわけではないんです。 さらに夏は都会や田舎関係なく暑いので、必然的にエアコンを使う時間が長くなる。そうするとエネルギー消費も増えて、結果ヒートアイランド現象も起きるし、温暖化にも影響するということです。 ── 都市部は気候変動とヒートアイランド現象の相互作用で、気温が上がっているんですね。