成立した「スーパーシティ法」とは? 討論で見る論点「個人情報」「規制緩和」「監視社会」
個人情報を一元的に管理で「恐るべき監視社会」出現
●大門実紀史議員(日本共産党)=反対討論 反対する最大の理由は、日本を中国のような監視社会に導き、個人のプライバシーと権利を侵害する重大な危険性があるからだ。 現在オンラインショッピングなど、個別のサービスで個人が自分の情報を提供しサービスを受けることは日常に行われている。しかし各サービスの間で、勝手に個人情報が交換されるということはない。 ところがスーパーシティ構想は、企業などの実施主体が住民のさまざまな個人情報を一元的に管理し、代わりに医療、交通、金融の各種サービスを丸ごと提供しようとするもの。 街中に設置された監視センサーによる顔認証やスマートフォンの位置情報によって、住民の行動を実施主体が掌握する。さらに個人情報や行動軌跡は、ビッグデータに集積され、AI=人工知能によって、分析=プロファイリング、個人の特徴を識別する。実施主体がその個人の情報だけではなく、特性や人格まで推定することが可能となる。 最先端のIT技術を活用した便利で快適な暮らしは国民の多くが望むものだが、個人情報を一元的に管理されると恐るべき監視社会が出現する。 政府がスーパーシティ構想のお手本にしたのが中国の杭州市だ。杭州市はIT大手企業のアリババの本拠地で、街全体のIT化が世界で一番進んでいるが、裏を返せば、街中に監視カメラが数千台もあるなど監視社会の最先端を走っている。科学技術というものは、どんな社会を目指すのかという哲学やビジョンによって方向性と中身が決まる。中国のような民主化を弾圧するような国が整えてきた監視技術を日本が見習い、後追いするべきではない。 世界的なベストセラー「サピエンス全史」を著した歴史学者ユヴァル・ノア・ハラリ氏は、日経新聞のインタビューに答え、「今回のコロナ危機が政府による監視を正当化し、個人のプライバシーを脅かす転機となる危険がある」と警告している。