成立した「スーパーシティ法」とは? 討論で見る論点「個人情報」「規制緩和」「監視社会」
快適な生活の代わりに自由とプライバシー差し出せない
●森ゆうこ議員(国民民主党)=反対討論 「国・自治体・民間で構成する強力な推進機関を設ける必要がある。推進機関とは従来の国家戦略特区の区域会議をさらに充実強化した、いわば『ミニ独立政府』。その推進機関には、域内での独自の規制の設定などを含め、強力な権限を与えること」。これが竹中平蔵氏を会長とするスーパーシティ構想実現に向けた有識者懇談会の最終報告の一部だ。 「ミニ独立国家」を目指すスーパーシティにおける主権者は誰か?という私の質問について北村(誠吾)大臣はあいまいな答弁を繰り返し、委員会は何度も中断した。 スーパーシティ構想では、「データ連携基盤」整備事業により、国・自治体の持つ行政・住民データ、企業保有データ、さらには空間座標などの地域データなど、膨大な個人情報を含む広範囲なデータが収集整理され、活用されて最先端のサービスが提供され、理想の未来社会を追求するとしているが、問題は、本人の同意なしに目的外使用や第三者への提供が可能になる場合があること。 にもかかわらず、もっとも重要な住民の合意形成が具体的にどのように図られるか、法案には明記されていない。最先端の技術を活用して、快適な生活を送ることに、だれも異論はないだろうが、その代わりに自由とプライバシーを差し出すことはできない。 スーパーシティの旗振り役だった片山(さつき)前大臣は、委員会でデータのローカライゼーションの確約、つまり国民のデータが海外の事業者によって、域外に持ち出されることのないようにと力説していたが、大きな違和感を覚えた。なぜなら、昨年締結された「日米デジタル貿易協定」には、ローカライゼーションの義務を課すことを禁止する条項があるではないか。 少なくとも米国の巨大IT企業が参入した場合には、協定によりローカライゼーションを主張することはできないのではないか。また竹中会長は最先端の技術を持つ海外の事業者を想定している趣旨の発言をしており、北村大臣も国内事業者に限らないとしている。