日本ダービー!単勝1.5倍人気のコントレイルは父ディープインパクト以来の史上7頭目の無敗2冠馬となれるのか?
「”取りこぼした”と思えたところから馬なりでまくっていきましたからね。強い競馬でした」とは武豊騎手。 実際、4コーナー手前から馬群の外を一気に進出すると、最後の直線ではサリオスをかわし、無敗のG1馬対決を制した。父ディープインパクトを思わせる勝ちっぷり。この走りが日本ダービーへ向け、自信から確信に変わった瞬間ではなかったか。コンビを組む福永祐一騎手も自信を隠さない。 「皐月賞をいままでとは違うレーススタイルで勝ったことにより、距離に不安もなくなり、レースの幅が広がった。走法、血統からいずれは距離の限界が見えてくると思っていましたが、厩舎と牧場の力で走るフォームが良くなった。これなら距離も融通が利く」 栗東のベテラントラックマンもコントレイルの進化を感じ取っていた。 「ここに来て飛びが大きくなり、走りに力強さが出て来た。皐月賞があの内容。不思議なもので種馬は晩年にいい子どもを出す。ディープインパクトがサンデーサイレンスの最高傑作だったようにコントレイルはディープの最高傑作でしょう。ダービーは2強から完全に1強に変わったのではないか」 競馬メディアは、今回のダービーをコントレイルと、皐月賞2着馬のサリオスの”2強対決”と表現。実際、サリオスも前日オッズで単勝5.0倍と2番人気に支持されているが、現場では「コントレイル1強」との見方が少なくない。
ここに一枚の写真がある。筆者が3年前の夏に北海道新冠町のノースヒルズを訪れたときのもの。芦毛の母ロードクロサイトの前で健気に立っているのが当歳のコントレイルだ。それがいまでは、こんなスターホースになろうとは。青鹿毛に出たのは父の父サンデーサイレンスから才能を引き継いだものと思えば、いまの活躍も納得ができる。 すべては2011年9月、矢作調教師が米国ケンタッキーのセリで母馬を見初めたときから始まった。その裏には「繁殖に上がっても楽しめるような良血の牝馬を探してきなさい」というノースヒルズ前田幸治代表の粋な計らいがあったことも忘れてはいけない。 「父がリーディングサイアーのアンブライドルズソングで母はブリーダーズカップJFの勝ち馬。上の2頭(バーンフライ、アナスタシオ)は短距離タイプですが、ディープをつけたとたんに、これですからね。いい繁殖牝馬は種馬のいいところを出すんですが、まさにそうでしたね。しかし、ここまで走るとは思っていませんでした」 矢作調教師は何度も「われわれの想像を超えた」と話す。そのひとつに、こんなエピソードもある。 実はコントレイルは球節に不安があり、1歳の暮れから2歳の5月まで半年間、人を乗せていない時期があったという。 「それが、その年の11月には1分44秒台で勝つんですからね。常識では考えられない。周りは完成度が高いと言うけれど、半年間のブランクがあってこれ。僕はもっともっと成長すると思っています。ディープインパクトのようになってほしい、そう願っています」 馬主、調教師、騎手ともにダービー制覇の経験がある。もちろん、ノウハウを蓄積した牧場スタッフの支えもあった。これらすべての経験値は大舞台をものにするためには欠かせない要素だろう。矢作調教師が言う。 「距離は何とも言えませんが、2400mのダービーへ向けて一丸となって取り組んできた。一番成長した点は馬のバランスと精神面。本当に良くなっています。東京コースはプラスになってもマイナスになることはない。今年は無観客ですが、いつかコントレイルを見にお客さんが競馬場に来てくれる日がくることを祈っています」