ルメールがジャパンC制覇で年間200勝に王手!なぜ外国人騎手は強いのか
正真正銘の化け物だった。11月25日、東京競馬場で開催された第38回ジャパンカップ(G1、2400芝)は単勝1・4倍の1番人気アーモンドアイ(牝3=国枝)が快勝。牝馬三冠に続き、G14勝目を挙げた。勝ちタイム2分20秒6は従来の記録を1秒5も更新する驚がくの世界レコード。その背中には当然、この男がいた。史上2人目となるJRA年間勝利「200」に王手をかけた39歳のフランス人、クリストフ・ルメールである。 鞍上のルメールは憎らしいほど冷静沈着だった。 単勝1倍台の断トツ人気。まして古馬の強豪牡馬との初対戦とあって不安要素が全くなかったわけではない。最内1番枠は一般的に好枠とはいえ、ゲートに不安を残すタイプだけに揉まれ込む危険性もなくはなかった。 確かに、負担重量の面で最大4キロ軽い53キロは有利。しかし、デリケートといわれる牝馬だけに過去には平常心を失うケースもしばしば。末脚届かず、あるいはなし崩し的に脚を使わされ、ラストが甘くなるのではないかと見る人もいた。 ところが、そんな心配をよそに、ルメールは好発を決めると、これまでの戦法とは違う3番手積極策。完璧に仕上げた厩舎も見事だが、ルメールのレース運びも完璧だった。高速決着に対応するため、逃げたキセキの3馬身ほど後ろをキープし、2番手で直線を向く。簡単に止まらない菊花賞キセキをペースメーカーにしたわけだ。残り400メートルで射程圏に入ると残り200メートルで並びかけ、残り150メートルで引き離す。全く危なげがなかった。 ルメールは京都開催だったJBC3競走のスプリントも制しており、これを含めると、この秋だけで、G15勝。年間G1勝利記録を「8」として、「7」の新記録をまた更新した。ルメールは、このジャパンカップの勝利で、年間の勝利数が「199」となり、昨年の自らの勝利数に並ぶとともに、武豊騎手以来、史上2人目となる年間200勝に王手をかけた。 JRAの年間最多勝利記録は、2005年に武豊騎手が記録した212勝。残りのレース数を考えると、ルメールが13年ぶりに、この記録を塗り替える可能性は十分。 また外国人騎手というくくりで言えば、10月14日の秋華賞を同じくルメールが騎乗のアーモンドアイが制してから、実に7週連続でのG1制覇となる。 では、なぜこうも外国人騎手は強いのか。なぜルメールは勝つのか。 ミルコ・デムーロ騎手の旋風が吹き荒れた昨年も24レースあったG1レースの過半数を超える13勝を外国人騎手が手にした。今年は、ここまで22レース中、半分の11勝が外国人騎手だ。外国人騎手の強さは、今年、突然、始まったものではないのだが、その理由を関係者に証言してもらった。 “論客”としてまずは元調教師の白井壽昭さんに登場してもらった。アーモンドアイの母フサイチパンドラを管理していた国際派は、「レスリングで言うとグレコローマンとフリースタイルほどの違いとでもいうのか。外国人は上半身の力が強い」と、フィジカル面の差に言及した。フィジカルの差は、イコール、手綱の引き方、ムチの入れ方や、その強さにも大きな影響を及ぼす。最後の直線で馬の能力を最大限に引き出すことにもつながってくる。 白井さんは、さらに、こう続けた。 「それと欧州の競馬はいつも団子状態、密集でレースをしている。だからどこでどうするかの観測力や、さばき、一瞬の判断が鍛えられている。いろんな場所で経験しているから感性が磨かれているんと違うかな。あと大きいのは情報量。ビデオをしっかりと見て確認してから追い切りに乗って馬の特性を知り能力を最大に生かすための分析ができている」 レースを読む能力だ。